ランニングコスト
ランニングコストとは、不動産投資の分野でいえば、管理や修繕など、不動産を取得したあとにかかる費用のことです。建築時にかかる費用であるイニシャルコストと対をなす言葉で、光熱費や清掃費、修繕費といった「維持費」に近い意味合いがあります。ランニングコストは、土地よりも建物に多くかかる傾向があります。また、ランニングコストは大きく分けると「管理費用」と「税金」に分類することができます。
管理費用
不動産運営において最も重要といわれるのが建物の管理です。管理がしっかりと行き届いている物件は、入居者にとってたいへん魅力的に見えます。築年数が古くても入居希望者が絶えない(空室率 の低い)マンションは、管理面で優れていることがほとんどでしょう。また、適切な管理は不動産の寿命を延ばすことにもつながります。なお、管理費用は、建物の運用にかかる「PM費用」と、建物の管理にかかる「BM費用」に分けて考えることがポイントです。
・PM費用
PM(プロパティマネジメント)費用とは、入居者に対して発生するコストのことです。不動産から得られる収益を高めるために必要な費用で、具体的には「広告費」「入居者手続き(不動産仲介業者に支払う仲介手数料)」「家賃の回収及び催促」「クレーム対応」などが挙げられます。また、入所者の退去時の状態によっては「部屋の大規模なリフォームの発生」など、突発的に大きなPM費用の負担が生じることもあります。このような事態に備える方法として、家賃収入の中から少しずつ修繕費などの管理費用を貯めておくと良いでしょう。
・BM費用
BM(ビルマネジメントまたはビルメンテナンス)費用とは、不動産(建物)自体に対して発生するコストのことです。住まいの環境は住民満足度に直結するだけではなく、資産価値にも関わる問題です。「建物の保全」「設備管理」「衛生管理」「セキュリティ」などが挙げられます。より具体的には、「植栽」「エレベーター」「貯水槽・ポンプ」「ゴミ集積場」「消防設備」「共用部の照明などの点検や清掃」「メンテナンス費用」、これらの維持に要する「電気代」や「水道代」が含まれます。これらの設備も、耐用年数
の経過、あるいは天災などの外部的影響で故障・破損すると、思いがけない出費が発生することになります。
BM費用についても、いざというときに備えて日頃から費用を貯めておくことが必要となります。また、専門の不動産管理会社に物件管理を「委託(サブリース)
する際の手数料」も、決して無視するわけにいかないBM費用として算出しておくべきです。
不動産の管理に関して、PM・BMいずれも、所有者がすべてをこなすのは困難です。そこで、ノウハウや実践経験の豊富な不動産管理会社に委託(サブリース)するのが一般的になっています。この場合、すべての業務を委託するケースもあれば、PM業務またはBM業務のどちらかだけを委託することもあります。
税金
不動産を所有する以上、これだけは絶対に回避できないランニングコストです。不動産の購入時には不動産取得税
が課せられますが、これとは別に、不動産を所有し続ける限り発生するのが「固定資産税」です。固定資産税とは、毎年1月1日に「土地・家屋・償却資産の所有者に対して課せられる税金」です。ほかにも都市計画税
や、法人を設立している場合には法人税なども課せられます。この固定資産税と都市計画税は、いずれも年4回の分割払いが可能です。また、家賃収入を事業所得
として得ていることに関して、所得税や住民税も課せられます。当然、これらも避けられませんので、事業が好調だからといって、入ってきたお金を浪費しすぎないことが肝要です。
所得税については、管理費用(PM費用・BM費用)を必要経費として確定申告
しておくことで、課税対象となる所得を抑え、節税することが可能です。そして、住民税は前年の所得を基礎に算出されるため、管理費用の支出によって間接的に節税できることも覚えておきましょう。
小規模と大規模、どちらのマンションが有利か
不動産投資で発生するランニングコストは、税金についてはある程度の予測が可能です。しかし、管理費用は物件や土地によって相場も異なります。
なお、ランニングコストのうち修繕積立金
や管理費には「スケールメリット」があります。つまり、より大規模な建物のほうが安価に抑えられることが多いのです。これは、規模の小さい建物は「1戸あたりの負担が大きくなる傾向」があるからです。
なお、不況になると、ランニングコストがかかる建物は値段が下がりやすくなります。これは、真っ先に手放そうとする会社や個人が増えることが要因です。この売却に際しても、「エントランスが大きく豪華に見える」「共用施設として、ジムやシアタールーム、銀行ATM、あるいはスーパーマーケットなどが併設されている」など、付加価値のある大規模な建物ほど高価になります。
また、マンションの場合は「必ず修繕が必要になる」ことも大きなポイントです。修繕積立金がない(あるいは不足している)場合は、「一時金」などの名目で大きな負担がのしかかることになります。また、修繕積立金が不足するような建物は、そもそも日々のこまめな修繕がなされていないケースが多いので、マンションへの投資を行うときは必ずチェックするようにしましょう。