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GLOSSARY
不動産用語集
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耐用年数

pixta_23938793_m 一般的な意味でいう「耐用年数」とは、「減価償却資産が利用に耐える年数」を指します。
東京都主税局では、耐用年数を「通常の維持補修を加える場合に、その減価償却資産の本来の用途用法により、通常予定される効果を上げることができる年数、すなわち通常の効用持続年」と定めています。
では、減価償却資産における「利用に耐えうる」とはどのような状態をいうのでしょうか。
建物を例に挙げますと、「経年によってかなり建物が老朽化してきているが、まだ我慢すれば自宅として居住できる」という意味ではありません。「本来の用途用法により通常予定される効果」とは、おもに経済効果を指しており、その建物が収益物件である場合は「賃貸物件として一定の家賃収入を得られる効用持続年」を耐用年数と考えます。

しかし、新築の収益物件と一定年数が経過した収益物件を比較した場合、新築のほうが収益性は高く、経年とともに収益物件の価値が減価していくであろうことは容易に理解できます。
そこで、建物や機械装置など、長年にわたる利用に耐えられる資産の減価を、各年に費用として配分していくことが認められています。これを「減価償却」といいます。

例えば、収益物件として3,000万円の新築マンションを購入したとしましょう。
購入から1年が経過し、地価の上昇やマンションの評価額の向上などの価格変動要素がなかったとすると、そのマンションは新築時よりも若干資産価値が目減りしていると考えられます。この段階で売却しても、新築時の3,000万円より少ない売却額となることが予想されます。この減損分を費用配分するというのが減価償却の考え方です。

減価償却は資産の購入後、何年間にもわたって行われますが、一定の年数が経過した時点で、その資産の残存価値はゼロ(帳簿上は備忘価格として1円が計上される)とされます。
つまり、耐用年数とは資産購入時から残存価値評価がゼロになるまでの年数ということになります。

しかし、資産の性質によって、利用に耐えられる期間は異なります。このため、税法では減価償却資産をその性質ごとに分類し、それぞれに耐用年数を定めています。これを「法定耐用年数」といいます。

「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)」によれば、建物・建物付属設備に関する耐用年数はおよそ次のとおりです(旅館用・ホテル用・病院用・公衆浴場用の物については省略)。

【建物】
○木造・合成樹脂造の物
事務所用の物…24年
店舗用・住宅用の物…22年
飲食店用の物…20年
工場用・倉庫用の物(一般用)…15年

○木骨モルタル造の物
事務所用の物…22年
店舗用・住宅用の物…20年
飲食店用の物…19年
工場用・倉庫用の物(一般用)…14年

○鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の物
事務所用の物…50年
住宅用の物…47年
飲食店用の物
延面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超える物…34年
その他の物…41年
店舗用・病院用の物…39年
車庫用の物…38年
工場用・倉庫用の物(一般用)…38年

〇れんが造・石造・ブロック造の物
事務所用の物…41年
店舗用・住宅用・飲食店用の物…38年
車庫用の物…34年
工場用・倉庫用の物(一般用)…34年

〇金属造の物
事務所用の物
骨格材の肉厚が(以下同じ)44mmを超える物…38年
33mmを超え、44mm以下の物…30年
33mm以下の物…22年
店舗用・住宅用の物
44mmを超える物…34年
33mmを超え、44mm以下の物…27年
33mm以下の物…19年
飲食店用・車庫用の物
44mmを超える物…31年
33mmを超え、44mm以下の物…25年
33mm以下の物…19年
工場用・倉庫用の物(一般用)
44mmを超える物…31年
33mmを超え、44mm以下の物…24年
33mm以下の物…17年

【建物付属設備】
〇アーケード・日よけ設備
主として金属製の物…15年
その他の物…8年
〇店舗簡易装備…3年
〇電気設備(照明設備を含む)
蓄電池電源設備…6年
その他の物…15年
〇給排水・衛生設備、ガス設備…15年

※国税庁「耐用年数(建物・建物附属設備)」より抜粋

上記の法定耐用年数は、いずれも事業用の建物に対する数字です。例えば、木造の店舗用・住宅用の建物は、新築から22年で耐用年数が来てしまいますが、これは建物を減価償却資産として考えたときの計算式に基づいています。同じ建物であっても、自身の住居やセカンドハウスとして使用する場合の償却率は大きく下がり、耐用年数も33年と1.5倍に延びるのです。鉄筋コンクリート造の建物も同様で、事業用の47年に対し、非事業用は70年と格段に長くなります。

もちろん、法定耐用年数は資産の物理的寿命とは関係ありません。建物の基本性能が高く、長期修繕計画を含む適切な管理が行われていれば、60年を上回る資産価値を期待できるマンションもあります。
例えば、比較的新しい中古マンションの場合、「スケルトン・インフィル」という工法を採用している物件があります。これは、建物を構造体(スケルトン)と内装・設備(インフィル)に分けて設計することで、比較的早期に傷みやすい配管などの設備を修理・交換しやすくするというものです。
このような物件の場合、インフィルの修理・交換の際に構造体を壊す必要がなく、建物全体の寿命を大幅に延ばすことが期待できます。

また、最近はコンクリートの質の向上などによって、理論的には100年を大きく超えて使用に耐えるというマンションも増えてきています。構造体さえしっかりしていれば、内装や設備はリフォームによって新築同様の美しさや利便性が回復できるでしょう。
物件を選択するにあたっては、このように、「建物の法定耐用年数」と「期待できる物理的寿命」とを比較してみることも重要かもしれません。

ただし、不動産投資に対して融資を受ける場合、金融機関は融資の判断において対象物件の耐用年数を重視しています。このため、返済期間が法定耐用年数をオーバーする融資は、難航することも考えられますので注意してください。

耐用年数を定める大蔵省令(財務省令)の歴史

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法定耐用年数は、必ずしも科学的に設定されているわけではなく、時に技術的な根拠を欠き、政治的な意図で変更される場合もあります。つまり、耐用年数を一種の呪縛のように考え、あまり固執するのも考えものです。

例えば、鉄筋コンクリート造(事務所)の場合ですが、関東大震災の5年前にあたる1918年に初めて耐用年数が定められることになり、主税局長通牒として「100年」と設定されました。しかし、1937年に固定資産の経済的陳腐化を理由として「80年」とされ、さらに1942年に「60年」と変更されています。そして終戦後の1947年に「80年」に戻されました。

また、1951年には、コンクリートの劣化速度やコンクリート建造物としての構造体、防水加工の外装材、さらに床や窓の耐久性、あるいは劣化に応じて維持補修を施すことで、耐久性延長の期待などを総合的に考慮し、科学的な根拠をもって「75年」と設定されました。しかし、高度経済成長期の1966年には、産業界からの要請に応える形で、企業の内部留保(利益剰余金)を充実させるために、建物の耐用年数を「65年」と短縮させました。

そして1998年、減価償却による費用配分の期間として、半世紀を超える期間は長すぎて、実際の経済活動に負担をきたしていることが考えられたため「50年」に短縮し、償却方式を定率法から定額法に改めています。

耐用年数の延長が見込まれるときの会計実務

税法における減価償却計算上の耐用年数(建物などの分類に沿って形式的に出した法定耐用年数の残り)が、経済的残存使用年数(経済的用法に見合う実質的な耐用年数の残り)と食い違う場合があります。

経済的残存使用年数は、その資産が将来的に経済活動ないしは日常生活の中で使用可能と予測される年数です。減価償却計算上の耐用年数を見積もるときに考慮する要素に加えて、物理的要因である材質・構造・用途なども加味して決定されるのです(公益財団法人財務会計基準機構の規定する「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」21項、99項)。
よって、税法耐用年数に基づく残存耐用年数を、経済的残存使用年数とみなすことができると考えられています(減損適用指針100項。ただし、両者のあいだに著しい相違があるなどの不合理が生じている場合を除きます)。
なお、実際は主要な資産の経済的残存使用年数と、その資産の残存耐用年数は原則として一致するものとされます。

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