残債
(ざんさい)
「残債(残存債務)」とは、住宅ローンや投資ローンなどの借入金のうち、未返済分の金額です。不動産投資において、所有している不動産を売却してから、その資金を元手に収益性の高い不動産に買い替えることがあります。しかし、残債が残っている場合は、アパートやマンションに抵当権
が残っているため、不動産を売却することはできません。
法律的には、抵当権付き不動産を売却することは可能です。ただし、売主がローンの返済を滞らせたときに債権者が抵当権を実行すると、買主が所有権を失ってしまうおそれがあります。そのため、不動産売買では「抵当権を抹消してから売却」するのが一般的です。具体的には以下のような場合に分かれます。
1. 売却代金や自己資金
で残債をまかなえる場合
この場合、抵当権を外せるので不動産を売却できます。なお、販売活動そのものは残債があっても可能です。決済時に「所有権移転と抵当権抹消を同時に行える」のであれば、取引きに影響が出ることはありません。また、買い換え用の頭金があるのならば、新たに投資ローンを組むこともできます。
2. 残債を支払えない場合
この場合、抵当権を抹消できないので原則として不動産は売却できませんが、「任意売却」や「買替えローン」などを利用すれば、残債が残っている状態でも売ることは可能です。ただし、買替えローンを組むと借入金額が増えたり、返済期間が延びてしまったりするなど、投資プランにずれが生じる可能性もありますので注意してください。
残債があるときの追加ローン
不動産投資においては、資産形成のスピードを上げるために、残債を抱えた状態でさらに投資ローンを組むことがあります。この場合、投資額は少なくなるのが一般的です。残債とはすなわち借金であるため、金融機関の評価としてはマイナスとなります。残債がゼロの人と比べて融資額が減るだけでなく、場合によっては融資を断られる場合もあります。
しかし、これはあくまで一般的なケースです。住宅ローンと比べて投資ローンは申請が通りやすく、投資用不動産
に収益性があると認められれば、希望どおりの融資を受けられることもあります。自己資産に余裕があり、尚且つ不動産の収入が安定している場合も同様で、残債が足かせになることはほとんどないでしょう。
住宅ローンで購入した住宅が担保に入っていて、残債が残っている場合でも、その住宅をさらに担保に入れて、例えばビジネスの「開業資金」や「つなぎ資金」、あるいは「教育ローン」を借り入れることも十分可能です。その住宅の時価から残債を差し引いても経済的価値が残っているようであれば、住宅を担保に入れる価値があるといえるからです。
もちろん、住宅ローンを借りたばかりの段階で、残債がほとんど減っていないようなときは、その住宅を担保に入れての追加融資は困難といえるでしょう。しかし、しばらく返済を継続し、残債がある程度減った段階であれば、追加融資の見込みがあります。
また、住宅の時価より残債のほうが上回っていても、金融機関の独自判断によりローンを組んで貸してくれる場合があります。このような形でローンを組んだ場合は、返済を滞らせないようにしなければなりません。もし、滞納が続いてローンの「貸し手と借り手の信頼関係」が崩れ、住宅の担保権が実行されたときには、ローンで購入した住宅が手元に残っていないにもかかわらず、「借金だけが残る」結果となるからです。
期限の利益とは
残債というものが生じるのは、借金をした人に「期限の利益」があるからです。期限の利益とは、定められた「返済期限が来るまでのあいだ、返済しなくて良い」という利益を指します。わかりやすい言葉に直すと「分割払い」の権利で、この期限の利益があることで投資家は安心して借入れを行い、不動産に投資ができるわけです。借り手としては、期限の利益が大きいほど、返済期限を先延ばしにすることができます。その間は借入金を活用できますし、返済を迫られないことから負担が軽くなることも特徴です。一方で貸し手は、期限の利益を大きく与え、返済期限を延ばすことで、より多くの利息を受け取ることができるようになります。
期限の利益の「喪失」や「放棄」
期限の利益を喪失するような行為を行った場合には、残債をすぐに「一括で返済する法的な義務」を負うことになります。一括返済ができなければ、担保に入れていた不動産が売りに出される結果にもなるでしょう。具体的には以下のとおりです。
- ・借金をした人が破産宣告を受けたとき
- ・借金をした人が担保(抵当権を設定した土地や建物、自動車など)を著しく汚損させたり、減少させたりしたとき
- ・借金をした人が、担保を出す義務を負っているのに、出そうとしないとき
- ・金の貸し手と借り手とのあいだで結んだ契約書に、「期限の利益喪失事由」として記載されている事柄が行われたとき
また、借金をした人が、みずからの意思で期限の利益を放棄し、残債を一括返済することもできます。その場合は、貸した側の利益を害することができませんので、返済期限までの利息をつけて一括返済することが原則です。