定期借地権
(ていきしゃくちけん)

定期借地権」とは、1992年8月に施行された「借地借家法 」によって新たに定められた権利です。
1992年まで有効だった、旧借地法6条によると、建物を建てている借地人(土地の借り手)が、借地権の期間が終わったあとも土地を使用し続ける場合、さらに借地権が設定されたものと見なされるという、いわゆる「自動更新」の定めがありました。地主(土地の貸し手)は、その土地を借地権者から取り戻して、自分で使うことを客観的に正当化できる事情(正当事由)がない限り、期間が過ぎても自動更新を認めなければならなかったのです。
つまり、土地を貸した相手が建物を建てた場合、土地が将来戻ってくることが事実上期待できず、「土地を貸すことは、土地をあげるようなものだ」とされていました。旧法は、地主に比べて、あまりにも借地人が(法的に)保護されすぎていると批判されていたのです。そこで、地主と借地人の公平を図り、安心して土地を貸せるようにするため、「期間が終われば必ず土地を返してもらえる」「返してもらうのに正当事由も立退料も要らない」定期借地権が、借地借家法で定められました。

定期借地権のメリット

・地主に経営リスクがない
その土地を定期借地権で利用して建物を建てたい人(あるいは会社)を見つけることができれば、元手がかからず、無借金での不動産経営が可能になります。建物を建築するのは借地人ですから、地主は何の経営リスクもなく、毎月の地代を受け取り続けることができます。新たな住人の住まい、あるいは医療モールや老人ホームなどに土地を提供し、美しい街づくりや地域社会に貢献できるのです。 広大地の場合は開発行為(宅地として分譲するとき、建築基準法や都市計画法が定めた条件を満たすための私道や公共施設の設置)が必要となる場合があります。それでも、定期借地契約を結ぶときに、借地人からまとまった額の保証金(賃貸物件でいう敷金のようなもの)を受け取っておけば、開発行為に必要な負担額の足しにすることができます。


固定資産税都市計画税 の大幅な圧縮
無借金経営なので、地代は基本的にまるまる地主の収入となります。土地にかかる税金(固定資産税など)は負担しなければなりませんが、借地人が建物を建てれば、その敷地に関する税金は大幅に下がりますので、更地で持っておくよりも遥かに有利です。


・相続税対策になる
路線価に借地権割合が適用されることによって、土地の相続税評価額 が下がりますので、誰にも貸していない所有地(自用地)を相続する場合よりも、課される相続税を抑えることができます。


・ライフスタイル重視の物件が増える
定期借地権を活用した分譲マンションは、借地権の存続期間が終われば取り壊されることが前提のため、その購入者は「不動産を所有する」「物件を買う」というより、「ライフスタイルを買う」という発想につながりやすいといえます。そのため、ユニークなデザインや居住性を重視した物件を、安価で提供することができるようになるのです。購入者の中にも、住宅ローンを早めに返済して、残りの期間を賃貸に活用するなど、積極的な不動産投資を行う方が増えています。


定期借地権のデメリット

土地の所有者は、定期借地権が存続する期間中である限りにおいて、何があっても土地を貸し続けなければなりません(ただし、その例外について特約を結ぶことは可能です)。
不動産投資の側面においては、この定期借地権を利用することで、土地を購入せずにマンションやアパートなどを建てられるようになります。浮いたコストは建物の設備投資などに回す投資家が多いようです。
ただし、定期借地権ではあくまで「土地を借りているだけ」なので、将来的に土地が値上がりした場合に、その利益を得られないというデメリットもあります。


3種類の定期借地権

・一般定期借地権
借地期間を50年以上とすることを条件にしたもので、「契約の更新がない」「建物再築による期間の延長がない」「契約満了後の建物買取請求がない」のが特徴です。期間満了時、原則として借主は建物を取り壊して、更地の状態にしてから返還しなければなりません。ちなみに、プロ野球・中日ドラゴンズの本拠地・ナゴヤドーム(名古屋市東区)も、67年間の一般定期借地権をもとに建てられているため、維持費を安く抑えることができているようです。


・事業用定期借地権
居住用を除く、事業での運用を目的としたもので、10年以上50年未満の契約をする場合に適用されます。一般定期借地権と同様に「契約の更新がない」「建物再築による期間の延長がない」「契約満了後の建物買取請求がない」のが特徴です。
コンビニエンスストアやガソリンスタンド、病院など、多くの店舗型ビジネスで利用されています。借地借家法の施行当初は10年以上20年未満の期間でのみ認められていましたが、2008年の法改正によって50年までの期間延長が認められています。


・建物譲渡特約付定期借地権
契約を30年以上に設定し、期間が経過したら「地主が建物を買い取る」ことを条件にしたものです。借地人には「建物を取り壊す費用負担がかからない」メリットがあります。建物譲渡特約付借地権は口頭でも設定することができますが、契約のスパンが非常に長くなりますから、将来的に「言った」「言わない」の争いに発展する可能性があります。トラブルを防ぐためにも、なるべく書面による契約を行いましょう。