ポートフォリオ

ポートフォリオとは「紙ばさみ」を意味する英語ですが、転じて書類鞄や作品集など「さまざまなものをひとまとめにして一覧できるようにしたもの」を指すようになりました。
投資業界では「投資家が保有している預貯金・株式・債券・投資信託などを総括したもの」をポートフォリオと呼んでいます。


投資においては、資産を増やすこと以上に「資産を守ること」が重視されています。イギリスのEU離脱に伴うポンド急落によってFXで大きな被害を受けた方が多かったように、投資方法をひとつに限定させてしまうと想定外のトラブルが生じた際、資産が大きく目減りしてしまいます。


プロの投資家は、上記のような想定しづらい投資リスクに備えるために株式・債券・投資信託など、複数の商材を組み合わせながら投資を行っています。銀行に分散して預金している方も多いと思いますが、その投資版と考えればイメージしやすいかもしれません。このように分散投資した商材をすべて指す場合「ポートフォリオ」という言葉が使われます。


分散投資に不動産が選ばれている理由

分散投資の商材を選ぶ行為を「ポートフォリオを組む」といいます。この際に重要なのが「リスクを分散させる」ことです。例えば株式に投資するとき、国内銘柄と海外銘柄を同時に保有していれば、どちらか一方の景気が悪くなったとしても資産を守ることができます。
また、銘柄も業種・業態ごとに分散させるのがポイントです。同じ自動車業界の株式に分散投資したとしても、自動車業界全体が不景気になってしまったら大打撃となります。例えば自動車業界と食品業界、製造業とサービス業というように、つながりの薄いところに投資をするのが肝要です。


ポートフォリオを組む場合、これまでは国内・海外の株式と債券、そしてREIT(不動産投資信託)を加えることでバランスを取るのが一般的でした。しかし、リーマンショックのように世界的な金融危機が起こった際には、これでも対応しきれません。
そこで新たな選択肢として注目されているのが「不動産投資」です。おもな理由としては以下のようなものがあります。


(1)価値が安定している
株式は価値が跳ね上がることもあれば、逆に半値近くまで下がってしまうこともあるハイリスク・ハイリターンな投資です。これに対して不動産投資は地価の上昇・下落などで価値が変動することはありますが、株式ほど急激かつ大幅に動くことは滅多にありません。
不動産投資特有の問題として「空室リスク」が挙げられます。住人が退去すると家賃収入が減ってしまうというリスクですが、退去時には事前に連絡されるのはもちろん、新生活が始まる時期や、契約更新のタイミングなどで発生するため、ある程度は予測が可能です。
安定して利益を生み続けるという点でも、リスクを計算しやすい投資といえるでしょう。


(2)節税効果がある
不動産投資は、取得時の不動産取得税 や登録免許税をはじめ、固定資産税 ・減価償却費・修繕費・管理費なども必要経費として計上することが可能です。ほかの金融商品と比べて税金リスクが低い商材といえるでしょう。「子供たちに少しでも多くの資産を残したい」という方にも向いています。


(3)インフレに強い
株式はインフレに強い商品といわれていますが、それは企業がインフレ率以上の成長をした場合のことです。仮に材料費の高騰などによって経営が上手くいかなかった場合は資産の増加は見込めないどころか、逆に目減りしてしまうこともあります。一方、不動産は物価の上昇とともに価値が上がっていくため、手堅く資産を増やすことが可能です。


このように一般的な金融商品と比べて、不動産投資はリスクが低い投資対象となっています。
特に現在のような先が読めない時代において、「資産を守る」ことができる不動産は投資家にとって魅力的です。株式や債券と並んで、ポートフォリオに組み込まれているのも自然な流れといえるでしょう。


不動産投資法人 のポートフォリオを参考に

不動産投資においても、国内不動産&海外不動産、首都圏物件&地方物件、単身向け&ファミリー向けといったように投資先を分散することでリスクを軽減することができます。とはいえ、ポートフォリオの構築は専門家でも悩むポイントです。どのように投資をすればよいのか分からないという方は、投資のプロである不動産投資法人を参考にしてみましょう。


例えば「住居特化型」のケネディクス・レジデンシャル投資法人が自社サイトで公開しているポートフォリオを見てみると、地域別投資比率は「首都圏68%」「地方都市圏32%」となっています。物件タイプ別投資比率では「単身世帯向けのワンルームマンション34%」「夫婦世帯向けのスモールファミリーマンション44%」「家族世帯向けのファミリーマンション22%」の割合で構築しているようです。


また「複合型」のSIA不動産投資法人のポートフォリオを見ると、地域別投資比率は「首都圏70%以上、地方政令指定都市等30%以下」で、物件タイプ別投資比率は「オフィスビル70%以上、商業施設30%以下」となっています。
同社ではその理由を、地域別では「安定性の見込める首都圏への投資を中心としつつも、高い利回りが期待できる地方政令指定都市等も投資対象として、地域分散に配慮したポートフォリオ構築を図るため」と説明しています。


このように投資先の比重を細かく調整することで効率化を図るのも、ポートフォリオを構築する際のテクニックとなっています。もちろん投資法人と同じ割合で購入する必要はありませんが、その狙いを知ることは個人投資家にとって大きなメリットとなるはずです。