贈与税
(ぞうよぜい)
贈与税とは、相続税法に基づき、贈与によって受け取った財産に課税される国税です。日本では、財産を受け取った側にのみ申告・納税義務があり、贈った側にはこれらの義務はありません。
親子、夫婦、兄弟などの扶養義務者から贈られた生活費や教育費など、通常の日常生活に必要な費用に関しては非課税とされています。
また、贈与税が課せられるのは、個人から金銭、不動産(土地・建物)、自動車などの財産を贈与された(無料で譲り受けた)個人であり、法人から財産をもらったときは贈与税ではなく所得税
が課せられます。
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの間に贈与された財産の合計額から、基礎控除の110万円を差し引いた残りの額に対して課税されます。このため、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税は発生せず、申告も不要です。
贈与税の計算方法は下記のとおりです。
贈与税=(贈与財産の課税価格-基礎控除110万円)×税率-「贈与税の速算表の控除額*」
(*贈与税の速算表の控除額・・・贈与税率は所得税と同じく超過累進税率となっており、計算を単純化するため、速算表には課税価格の区分ごとに控除額が設けられています。課税価格に税率を乗じた額からこの控除額を差し引くことで、超過累進税率を簡単に計算できます。)
さて、贈与税額を計算するにあたっては、贈与財産のうち、現金以外の財産の価値を評価して「課税価格」を求める必要があります。
不動産の場合、土地と家屋は別々に評価されます。
土地の課税価格は、贈与された土地に路線価が定められている場合、路線価方式で評価されます。路線価は実勢価格のおよそ70~80%程度となるのが一般的でしょう。また、路線価が定められていない土地の場合は倍率方式で評価されます。これは、その土地の固定資産税評価額 に一定の倍率をかけて求めた評価額です。
建物の課税価格は固定資産税評価額と同額に評価されます。
なお、課税時期に貸家の用に供されている家屋(賃貸マンションなど)は、その家屋の固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合を乗じた価額を、その家屋の固定資産税評価額から控除して評価されます。
さて贈与税には、上記の「一般贈与財産用」の計算で用いられる一般税率のほか、「特例贈与財産用」の特例税率が定められています。これは、直系尊属(父母・祖父母など)から成人の直系卑属への贈与に適用される税率で、一般税率に比べて税負担が軽減されています。
また、住宅購入資金の贈与を両親などから受けた場合、「相続時精算課税制度 」または「相続時精算課税選択の特例」のいずれかを選択できます。これらは贈与税と相続税を一体化し、将来財産を相続することを前提に、生前贈与をやりやすくするための制度です。
さらに、平成 27 年1月1日から平成31年6月30日までの間は、直系尊属から住宅購入資金の贈与を受けた場合、特定の条件を満たすことで最高1,500万円まで非課税となる「住宅取得資金の非課税制度」も利用できます(上記制度と併用も可)。
贈与税と類似した税としては、死亡した個人から財産を受け取る場合は相続税、また法人から財産を受け取る場合には所得税が課せられます。相続税の負担回避を防止するような性格を持つもので、相続税法においては相続税とともに規定されていることから、相続税を補完するのが贈与税といえるでしょう。
贈与税の課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。
・暦年課税
1月1日から12月31日までの1年間、譲り受けた財産の合計額から基礎控除の110万円を差し引いた金額に対して、税金が課せられる制度です。平成27年の改正に伴って最高税率が50%から55%へと引き上げられましたが、同時に直系尊属(父母や祖父母など)から受贈された場合、金額によっては税率が下がるなどの緩和も行われました。
・相続時精算課税
60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対して贈与する場合に選択できる制度です。贈与された年の1月1日から12月31日までの1年間、譲り受けた財産の合計額から2,500万円を控除して、残った金額に対し税金が課せられます。
税金対策として不動産贈与を行う場合、暦年課税の基礎控除額である110万円を超えることがほとんどなので、一般的には相続時精算課税が選ばれる傾向にあります。ただし、この制度を選択した場合、以降「暦年課税」へと変更することはできません。
税金対策に不動産贈与が選ばれる理由の一つに、物件を賃貸化することで固定資産税評価額が下がる点があります。不動産を貸し出すと借主に借家権や借地権が発生して、貸主 が自由に使える部分が少なくなってしまうためです。贈与税が課せられるのは不動産購入時の金額ではなく評価額で決まるので、基本的には1億円の現金をそのまま贈与するよりも、1億円の物件を贈与した方が支払う税金も少なくなります。
「相続」と「贈与」のどちらを選ぶか迷う方も多いのですが、受け取る側にとっては贈与の方が負担は少なくなる傾向にあります。何も対策をせずに投資用不動産
を相続すると、建物や土地が生み出す利益も相続対象になるため、相続時に支払う税金が大きくなってしまいます。
一方、生前贈与ならば不動産が生み出す利益は受贈者のものとなるので、相続時の支払いを抑えられるだけでなく、その収入を相続準備金として運用することもできます。ただし、贈与で不動産を取得した場合には不動産取得税
が発生するので注意してください。