事業ローン(プロパーローン)
「事業ローン」とは、事業資金や開業資金を目的としたローンの総称です。個人契約者を対象にした消費者金融やカードローンなどによる融資とは、対比される関係といえます。なお、不動産向け事業ローンの取扱いがある金融機関は、地方銀行や信用金庫、信用組合がほとんどです。
事業ローンは、無担保・第三者連帯保証人不要のビジネスローンを指す場合もありますが、不動産投資用語としては「住宅ローン以外の、収益物件
への投資事業を行うためのローン」という意味で使われます。また、プロパー(proper)という語には「正規の、固有の、独自の」などさまざまな意味がありますが、金融用語におけるプロパーローン(プロパー融資)とは、保証会社の保証を利用せず、金融機関が独自で貸付先の信用度を見極め、みずからの判断と責任に基づいて自社で調達した資金を貸し出すローンを指します。
住宅ローンなど、ほかのローンとの相違点
不動産投資用語として「プロパーローン」という場合は「不動産購入資金の調達方法として用いるプロパーの事業ローン」を指すのが一般的でしょう。そこで、まずは住宅ローン及びアパートローン
と、プロパーローンの違いをまとめました。
・審査基準の違い(プロパーローンのほうがきびしくなりがち)
・金利の違い(プロパーローンのほうが高く設定されがち)
いずれのローンでも、融資審査では「将来にわたって確実に返済し続けて、完済可能かどうか」を見ています。ただ、住宅ローンの場合は「その一家の収入の安定性」をチェックするのに対して、プロパーローンの場合は、その不動産を用いて「採算の取れる事業を行えるかどうか」をチェックしますから、リスクを取って行う事業である以上、収益の不安定性は大前提です。その上で、最悪の事態に陥ることを想定しても返済を見込めると判断されて、初めて融資が実行されます。
プロパーローンは、融資を実行する金融機関の側にとっても、返済が滞ったり、事業が破綻したりするリスクを負うものですから、申し込んだ時点の投資家の自己資金 が豊富であれば、融資が実行されやすくなる性質があります。余裕をもって投資に取り組んでいることがわかれば、破綻のリスクが低くなると考えられるからです。
住宅ローンやアパートローンの場合、審査の段階で、保証会社が保証を引き受けるかどうかを判断するための「チェックリスト」によるふるい落としがあります。チェックリストには年収や勤続年数、あるいは消費者金融の事故情報の有無といった審査基準が設けられており、その基準を満たさない場合、住宅ローン審査は通らないと考えるべきでしょう。
しかし、プロパーローンは保証会社を経由することなく、金融機関が独自の審査で融資の可否を決定しますから、その金融機関が「総合的に評価して、十分な返済の意志と能力がある」と評価すれば、一般的な住宅ローンの審査が通らない人でも融資を受けられる可能性があります。
また、プロパーローンは保証会社に支払う保証料が不要ですから、不動産を購入する際の諸費用を圧縮できるメリットもあります。投資初期の費用負担を少しでも減らしたい投資家にとって、たいへん便利な融資のしくみといえるでしょう。ただし、プロパーローンが債務不履行になると、その損失はすべて銀行が被らなくてはならないため、審査自体はかなりきびしくなります。また、融資に際しては「保証人」あるいは「連帯保証人」が必要で、融資対象不動産には金融機関が第一順位の「抵当権 」が設定されます。
プロパーローンにも住宅ローンと同様の「変動金利 」と「固定金利」が用意されています。一般的な住宅ローンには優遇金利が設けられていますが、プロパーローンの金利は住宅ローンの金利より、少し高くなる傾向があるようです。しかし、低金利のタイミングをうまく見計らって固定金利の融資を受ければ、一般的な住宅ローンよりもお得な利率で借入れができることもあります。
プロパーローンの利点とリスク
ほかのビジネスにも通じるところですが、不動産投資は自己資金のみで行うよりも、ローンも利用したほうが大きな初期投資を行えますので、将来的な収益も大きくなることが期待できます。つまり、事業規模にレバレッジをかけられるのです。てこの原理のように、小さな原動力から大きな結果を獲得することが可能になります。
別の側面からいえば、ほしい事業用物件を手に入れるまでに必要となる、自己資金を貯める時間を大幅に短縮して、早期に不動産投資を始めることができます。プロパーローンを利用することで、投資の絶好のタイミングを逃すことが少なくなります。
もっとも、自己資金が少なすぎれば、融資は実行されにくくなります。レバレッジをかけるにしても、そのきっかけとなる元手が必要なのは当然のことです。投資規模や金融機関によって求められる自己資金の割合は異なりますが、一定規模の貯蓄は必須と考えてください。
大きな効果のあるプロパーローンであるだけに、一定のリスクもつきまといます。自己資金のみで行う不動産投資であれば、その必要経費や物件の維持費のみを気にしていればいいのですが、ローンを組んだときは「毎月の返済」を確保しなければならないプレッシャーが加わります。
環境の変化など、自分の努力ではどうにもならない事情で空室が目立つようになれば、精神的にゆとりを持って投資に取り組めなくなるかもしれません。
また、物件を手放すときに、売却金で残債 を埋められないかもしれません。自己資金での補填ができなければ、不動産投資から撤退したあとも、残った借金を返済し続ける必要があります。
不動産投資が事業である以上、借金は絶対に避けなければならないものではありません。しかし、プロパーローンを受ける場合は、不動産価格と将来の収益の見通しを立てて、借入額と毎月の返済額のバランスを慎重に検討する必要があります。