自己資金

自己資金とは、不動産購入に際して、住宅ローンなどの金融機関からの借り入れのほか、自分で用意できる現金のことです。


「不動産投資を始めるにあたって、自己資金はどれくらい必要か?」とお悩みの方は多いはずです。例えばマイホーム購入の場合は物件購入価格の20%以上が目安といわれていますが、投資用物件もおおむね同じで20~30%が理想的な金額となっています。


不動産投資における自己資金の活用シーン

フルローン が組みやすくなっている今、少ない自己資金でも不動産を購入することは可能ですが、元手が多いのに越したことはありません。不動産投資をするとき、どのようなシーンで自己資金が必要になるのでしょうか。


(1)頭金を支払う
頭金とは、不動産を取得する際に、現金で支払う部分のことを指します。以前は物件価格の20%が必要といわれていましたが、現在は頭金ゼロで融資してもらうことも可能です。
ただし、頭金を入れないということはそれだけ借入金が増えるということで、それに伴って、最終的に支払う金額も多くなってしまいます。返済リスクを減らすためにも、自己資金に余裕があるのならば少しでも多く頭金として支払っておきたいものです。


(2)諸経費にあてる
諸経費とは、不動産を取得するときに発生する費用のうち、物件費用を除いた出費のことです。具体的には仲介手数料、印紙税や固定資産税 といった税金、ローンの保証料、保険料などが挙げられます。物件の規模によって金額は異なりますが、諸経費の目安としては新築物件が物件価格の3~7%、中古物件は6~10%に収まるケースが一般的です。これらをすべて現金で支払う必要があります。
諸経費を用意できない場合は、専用の「諸経費ローン」を組んで対応することも可能です。ただし、通常のローンと比べて金利がやや高めの設定となっています。


(3)臨時支出の備え
不動産経営では時間の経過に伴って、外観や内観の修繕、設備のメンテナンス、リフォームなどの臨時支出が発生します。これらは物件費用には含まれておらず、基本的には現金で支払う必要があります。
金融機関によっては「リフォームローン」を組めるところもありますが、通常のローンに加えて、新しいローンの負担が増えるわけですから、キャッシュフロー が悪化する可能性があります。返済計画に遅れが生じることもあるので注意しなければなりません。


このように不動産投資ではさまざまなシーンにおいて自己資金が必要になります。できるだけ自己資金を少なくして不動産投資を始めたい場合、「初期費用が少額で済む物件を探す」「購入価格と金融機関の評価額の差ができるだけ少ない物件を探す」などの方法が現実的です。


オーバーローン の危険性

ネット上では「自己資金ゼロでも不動産投資はスタートできる」という謳い文句も多く見られますが、これらの情報をよく見ると、物件価格をすべて借り入れするフルローンを指していることが多いようです。確かにフルローンならば物件価格の負担はゼロになりますが、不動産購入に伴う「諸経費」については現金が必要です。
その一方、物件費用だけではなく諸費用の分まで融資を受けることを「オーバーローン」といいます。この方法ならば自己資金がまったくゼロでも不動産投資を始めることは理論上可能です。ただし、オーバーローンにはいくつかリスクが伴います。


(1)法的リスクが高い
融資とは、そもそも必要な出費に対して必要なだけのお金を借りる契約です。例えば5000万円の物件を購入する際、見積もり額を余分にとって5500万円のローンを申請するということは、銀行に対する詐欺行為に該当します。オーバーローンが発覚した場合、逮捕される可能性があるだけでなく、金融機関から融資を受けられなくなったり、借入金の一括返済を求められたりするなどのペナルティを負うことがあります。


(2)返済リスクが高い
物件価格に加えて諸経費まで借り入れるということは、通常のローンと比べて借り入れる金額が大きくなるわけですから、発生する利子も当然増えてしまいます。
不動産によって生み出される利益が大きければ問題ありません。ただし、ローンの負担に耐え切れずに返済が滞ってしまった場合は、投資用不動産 は差し押さえられてしまいます。


例えば一戸建てならばデザインや素材によって金額が大きく変わるので、市場価格と比べて不自然な価格でなければオーバーローンを組んでも発覚しにくい傾向があります。ただし、取引価格がはっきりしているマンションでは認められないケースが多いようです。
オーバーローンを組めるかどうかはともかく、法的・返済リスクが高いことからお勧めはできません。


リスクを抑えるためには自己資金が必要

今まで不動産投資をする際には巨額の資金が必要でしたが、現在はローンを賢く使うことで自己資金をほとんど使わずに不動産を購入することが可能です。ただし、極端に自己資金が少ない場合は、収益物件 を取得できたとしても、不動産経営をする際に発生するコストに対応できない恐れがあります。


ローンが支払えずに不動産をやむなく売却するとき、購入資金のほとんどをローンに頼っていた場合は、売却金額がローン残金を下回ってしまう可能性もあります。


以前と比べて、少ない金額で不動産投資を始められるようになったとはいえ、このようなリスクに備えるためにも、ある程度の自己資金を用意しておきたいものです。