家賃保証
(やちんほしょう)

「家賃保証」とは、オーナーの家賃収入を保証してくれるサービスで、「賃貸保証」ともいいます。毎月の家賃収入が保証され、安定的に確保できることにより、物件の賃貸需要に影響されずに投資基盤を確立できますし、金融機関からの融資を受けやすくなるメリットもあります。

この家賃保証は、大きく「滞納保証」「一括借上げ」「空室保証」という3つのサービスに分けることができます。結果的に家賃を保証するという意味は同じですが、その方法や内容は異なります。なお、滞納保証は、借り手が保証料を負担するのが一般的ですが、「一括借上げ」と「空室保証」は貸し手(不動産オーナー)が契約するものです。

滞納保証

滞納保証とは、家賃の滞納が起こったときに、借主に代わって家賃保証会社が立て替えてくれるという制度です。
賃貸物件の入居希望者は、両親や兄弟などの「身内を連帯保証人」にした上で契約することがほとんどです。不動産の賃貸契約において連帯保証人が必要とされるのは、借主が支払うべき家賃が滞ったとき、代わりに支払う資力や信用がある人を確保しておく意味があります。

ただし、諸事情によって連帯保証人を確保できない場合も考えられます。そのときは、部屋の借主に「専門の家賃保証会社」と契約を結んでもらうことにより、万が一の滞納のリスクをカバーすることができるのです。保証料は一般的に、「毎月の家賃に上乗せする」「毎年1回、まとめて徴収する」のいずれかの形態を採ります。

オーナーにとって大切な収入源となる家賃ですが、すべての人がきっちり支払ってくれるわけではありません。どのような理由であれ、払ってもらえなければ月々の収入が減ってしまいますが、オーナーみずから「早く家賃を支払ってくれ」と交渉するのは難しいことです。
滞納保証の契約を結んでおけば、万が一、滞納が発生しても代わりに家賃を請求してくれます。初めて大家になる方はもちろん、住まいから遠い不動産に投資した場合におすすめの制度です。

一括借上げ

一括借上げとは、保証会社が物件を丸ごと借り上げるという形態での家賃保証システムです。英語では「 サブリース(sublease)」といい、「又貸し」や「転貸借」を意味します。
一括借上げでは、たとえ部屋が空室だったとしても、保証会社に貸している状態ですから家賃がしっかりと入ってきます。空室リスクをカバーできる点ではうれしい制度といえるでしょう。また、物件の補修や改修、賃借人のトラブル、近隣からのクレームなどにも、保証会社が代わりに対応してくれます。

しかし、一括借上げは「収益性が落ちる」というデメリットがあります。保証会社が賃貸管理も行ってくれるためオーナーは実質何もしなくていいのですが、その分、家賃の1~2割程度の手数料が発生します。さらに、借上げ家賃以外の礼金や敷金、更新料などが受け取れません。これらは、本来であればオーナーが受け取るはずのお金ですが、一括借上げの場合は「保証会社の取り分」となりますので注意してください。

また、一括借り上げによる家賃保証には「免責期間」があります。契約から30~90日程度は、保証会社が空室保証をしなくていいというルールです。その間、保証会社はできるだけ空室を埋めるよう営業努力をするので、そのための猶予期間といっていいでしょう。免責期間中は保証を受けられない(空室でも家賃が支払われない)にもかかわらず保証料を支払う必要があることから、オーナーにとっては経営リスクになります。

このため、免責期間は短いに越したことはありません。しかし、中には120日や180日といった長期の免責期間を設定する業者も見受けられます。よほど需要に乏しい立地でない限り、こうした業者は「入居者を集客する実力が十分でないおそれ」がありますので、たとえ保証料が安く抑えられているとしても、それなりの理由があるものと心得ておくべきです。

空室保証

空室保証とは、保証会社に月々の保証料を支払っておくことで、入居率の高低にかかわらず、一定の家賃が保証される制度です。空室が多いときに補償される「保険プラン」といえばイメージしやすいかもしれません。

オーナーにとって大きな悩みとなる空室リスクを抑えられる効果はもちろん、安定して収入を得られますので、手堅くマンション経営をしたい方におすすめのサービスです。
一括借上げも、広い意味では空室保証といえますが、空室保証契約は、物件の借上げを伴わず、空室が出た場合の家賃を肩代わりする点に特化したシステムです。
また、空室保証の場合、一括借上げと違って敷金・礼金・更新料などはオーナーが受け取れます。これらを臨時収入として「ローンの繰上返済」にあてる、株式などの投資に回すといった、資産運用の原資とすることも可能です。

このように、一口に家賃保証といってもさまざまなスタイルがあります。自分に合った保証や、投資した物件に最適な保証がどれなのか、しっかりと見極めることが大切です。

家賃保証のリスク

家賃保証会社も、保証をビジネスで行っているわけですから、「空室が多い物件を保証することは拒否」してきます。そこで、保証を受けるまえに、自力で「入居率を少しでも改善」しておく必要があります。家賃を下げたり、部屋のリフォームを行ったりすることで、最低限の入居率を確保し、家賃保証を受ける下地を作るのです。

しかし、家賃の引き下げによる収入減やリフォームの費用負担が重くなった結果、不動産経営そのものにリスクが生じる場合もあります。保証を受けるための入居率アップ施策は、収支のバランスをよく考えて行いましょう。

家賃保証事業に対する規制の動き

 yatinhosyo_01.jpg 2009年、国土交通省は住宅局住宅総合整備課長名義で、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会に対して、「家賃債務保証業務の適正な実施の確保の要請等について」と題する通知を出し、以下のような指摘をしています。

・賃借人が家賃を滞納している場合などに、公衆の目にふれるような文書を掲示する形式の督促をすることは、たとえ契約書で賃借人が同意していても、慎むように(民事上の不法行為・刑事上の名誉毀損罪にあたる可能性)。

・賃借人が家賃を滞納している場合などに、無断で部屋へ立ち入ったり、物品を外へ持ち出したり、勝手に処分したり、扉の鍵を開けられないようにしたりすることは、たとえ契約書で賃借人が同意していても、慎むように(不法行為、住居侵入罪などにあたる可能性)。

・家賃債権について、物件のオーナーに代わって家賃保証会社が訴訟代理権を持つ旨の取り決めは、弁護士法72条違反(いわゆる非弁行為)となる可能性が高い。

また、家賃保証に関して相次ぐトラブルへの対策として、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」の改正法が2017年4月26日に公布されています。この改正により、家賃債務の保証を適正且つ確実に実施することができる財産的ないしコンプライアンス的基礎が固められているとして、国土交通省が定める要件に該当する業者を、公式に登録するしくみとして「家賃債務保証業者の登録制度」が創設されます。

登録のある家賃債務保証業者は、おもに以下のような行為が義務付けられます。

・受領した家賃を、自社の財産と分別管理すること
・自社に家賃債務保証業者としての登録がある事実を示す標識を、公に向けて掲示すること
・賃借人の家賃支払いについて、履歴を帳簿に記録すること
・虚偽告知や誇大広告の禁止
・賃貸借契約の締結までに、賃借人候補者に対し、重要な事項に関する説明と、その旨を明記した書面を交付すること
・賃貸借契約締結時に、賃借人に書面を交付すること
・適正な業務運営確保のため、必要に応じて国土交通省に報告し、資料を提出すること
・違反行為などがあり、家賃債務保証業者登録の取消があったときには、その事実の公表に同意すること

登録があれば、家賃保証についてしっかりした運営を行う業者であることを公示でき、不動産投資オーナーに対して安心感を与えることができます。また、家賃債務保証業者の登録は、5年ごとの更新制なので、安心感が中長期的に継続することが担保されるのです。

ただし、この家賃債務保証業者の登録は任意であり、登録しなくても家賃保証事業そのものは行えるので、規制を徹底できるかどうか、疑問視する声もあります。新しい制度であるだけに、問題や不足が生じれば適宜修正する必要もあるでしょう。
今回の取組みが「不動産投資オーナーにとって円滑且つ適正な家賃保証が行われる」制度に育つよう、今後も注視していく必要があります。