サービサー(債権回収会社)

「サービサー(債権回収会社)」とは、法務大臣の許可を受けて貸付債権などの回収業務を行う専門業者のことです。銀行やリース会社などが保有する債権を買い取ってその債権回収を行ったり、金融機関などの債権回収業務を受託したりしています。
他人からの依頼を受けて、報酬を得る目的で業務として債権回収にあたるのは、従来は弁護士のみに限定されていました。他人の事件に介入して、不当なやり方で他人の権利を代理的に行使しようとする「事件屋」などと呼ばれる裏稼業が暗躍していたことが社会問題になっていたからです。
しかし、バブル景気が崩壊した1990年代から、金融機関が回収できない債権を膨大に抱えるようになってしまい、弁護士資格を持つ者だけでは事件処理が追いつかなくなってしまいました。そこで、弁護士や弁護士法人以外の民間企業でも、他人の債権回収を業務として引き受けることを特別に許されたのがサービサーです。1999年から制度が始動しました。

サービサーの業務内容・現状

サービサーの業務を行うには、「資本金5億円以上の株式会社」「取締役に1名以上の弁護士が含まれている」「暴力団など反社会的勢力をその業務に従事させ、またはその業務の補助者として従事させていない」といった法律が求める要件を満たした上で、法務大臣の許可を得ることが必要です。
サービサーは、2016年12月8日現在、86社が法務大臣の営業許可を受けて活動しています。制度開始から、サービサーが取り扱っている債権の累積件数は1億4,000万件を超え、取扱債権の累積金額は約400兆円。そのうち累積回収金額は約45兆5,000億円余りです(2016年3月・法務省発表資料より)。
債務者の支払い能力がほぼ皆無であり、回収が絶望視されていた債権を取り扱うという業務の困難性が伴うため、サービサーが債権総額の10%以上の回収を成功させている点は、一定の評価をすべきでしょう。


なお、サービサーが行える業務は、他者が保有しつつ、債務者から弁済を受けることが難しくなっている「特定金銭債権」の回収です。特定金銭債権とは、銀行や信用金庫、保険会社などの金融機関が保有している貸付債権やリース・クレジット債権などを指しています。不動産投資に関連していえば、「特定目的会社や受託信託会社が保有する賃貸マンションが証券化 された際の賃貸マンションの賃料収入」が、サービサーによって回収対象となる「特定金銭債権」の範囲に含まれている点に注目すべきでしょう。
サービサーは、その業務の性質上、社会の景気が良くなるほど、業績がきびしくなりやすい傾向があります。景気が上向けば、いわばサービサーの「取扱商品」である不良債権そのものが、市場に出回りにくくなるからです。

反社会的勢力の排除

すでに述べたとおり、債権回収業務は、「事件屋」などが引き受けた場合、脅しやだましなどの不正手段によって行われ、穏やかな社会生活が脅かされるリスクが高まります。そのリスクを極限まで抑えるため、反社会的勢力がサービサー業務に参入してこないよう、さまざまな施策が採られています。
東京都内では、サービサー法の施行翌年である2000年から、「警視庁管内サービサー暴力団排除協議会」を設立しており、大阪府にも2011年に同様の協議会ができました。また、反社会的勢力からの債権買い取りや回収受託を拒否したり、和解契約を結ぶ際に債務者が反社会的勢力ではないかどうかのチェックなどを行う取組みも行われています。

危険を引き受ける公的サービサー「整理回収機構」

組織的には民間企業(株式会社)ではあるものの、公的な位置付けのサービサーとして住宅金融債権管理機構を前身とする「整理回収機構(RCC)」があります。
整理回収機構は、反社会的勢力を債務者とする不良債権を金融機関が保有していて、回収が事実上不可能となっている場合、その債権を買い取ることがあります。そうして、預金保険機構や警察などと連携しながら、反社会的勢力を相手にした債権回収を目指します。整理回収機構の存在と働きによって、金融機関と反社会的勢力とのあいだに生じる可能性がある、厄介な関係の断絶が期待されているのです。

サービサーの取締役弁護士(取弁)

サービサー法では、「常務に従事する取締役のうちにその職務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有する弁護士のない株式会社」に対して、サービサーの営業許可を出すことを法務大臣が拒否できることになっています。つまり、すべてのサービサーには、弁護士が取締役として就いていなければなりません。また、就任に際して所属弁護士会の推薦を受けることが前提条件となっています(法務大臣が日本弁護士連合会の意見を求める場合もあります)。ただ弁護士資格を持っていればいいわけではなく、一定の信頼性や経験が求められているのです。さらに、弁護士が取締役に就任している事実によって、反社会的勢力がサービサー業務に参入したり関与したりすることを法が牽制し、事実上排除することを目指しているといえます。
サービサー業者について、弁護士資格者が「監査役でなく取締役として内部的に関与する」ことになっているのは、弁護士に求められている役割が「コンプライアンス違反の指摘」にとどまらず、必要に応じて内部ルールやマニュアルを修正・改定したり、場合によっては新たなルールやマニュアルを創設したりすることも期待されているからだといわれています。