犬と猫と言えば、我が国では江戸時代から人気を二分してきた「ペットの象徴」です。
ペットフード協会の調査によれば、2014年10月現在の犬の飼育頭数は1034.6万匹、猫のそれは995.9万匹。犬は5.5世帯に1世帯、猫は5.7世帯に1世帯が飼育している勘定です。
また、総合市場調査大手の矢野経済研究所の『ペットビジネスに関する調査結果 2014』によれば、2014年のペット生体、ペットフード、ペット用品、ペットサービス(ペット美容室、ペットホテル、ペット保険、動物病院等)などの「ペット関連総市場」の規模は前年比0.8%増の1兆4288億円。ペットビジネス市場も成熟化したのか過去10年、成長は実質横這いになっています。
一方、首都圏で賃貸ペットマンション物件を探している入居希望者が賃貸マンション入居希望者全体の30%を超えるとのデータがあるのに対して、首都圏の賃貸ペットマンション物件は全物件の10%程度と見られており、賃貸ペットマンションは絶対的な供給不足になっています。換言すれば、通常の賃貸マンション市場が現在は買い手市場に変化しつつあるのに対し、賃貸ペットマンション市場は今なお売り手市場なわけです。
にもかかわらず、なぜかこの売り手市場に進出しようとするオーナーが少ないのが現状です。
賃貸ペットマンションは一般に次のように区分されています。
このうち、ペット可マンションは「マンションでペット飼育をされるのは嫌なのだが、入居者のニーズが高いので背に腹は代えられず仕方なくオーナーがペット飼育を認めているマンション」(不動産業界関係者)が実情と言われ、ペット飼育者は肩身の狭い思いをしながら入居しているようです。現在の賃貸ペットマンションの大半がこのタイプと推測されています。
ペット共生型マンションの供給戸数はさらに少なく、ペットマンション全体の2~3%と言われています。
ペット共生型マンションは、
――などを標準装備しているのが普通で、ペット飼育者にとっては理想的な賃貸マンション。このため空室待ちの入居希望者が行列状態と言われています。
ペット専用マンションに至っては、一般の飼い主には高嶺の花。そもそもペット愛好家が趣味と実益を兼ねて建てた物件が多く、オーナーの愛好家仲間など縁故入居がほとんどとも言われています。
これだけのニーズがあるにもかかわらず、賃貸ペットマンション供給戸数がそれほど増えないのは、
●ペットに住戸を汚されたり傷つけられたりするのではないか
●ペットの臭いが床や壁に染み込み、ペット飼育入居者が退去した後の原状回復で臭いを除去できない。それにより住戸の商品価値が下がってしまう
●ペット飼育者が入居していた空室への入居をペット嫌いの消費者は嫌がる。それにより空室期間が長引くのではないか
●ペットの鳴き声などで近隣トラブルが多発するのではないか
――などの危惧を拭えないオーナーが多いからだと言われています。
それも一理ある話で、ペット可マンションのような中途半端な物件では、売り手市場であっても入居者を引き付ける要素とはなりがたく、経営リスクも高いかもしれません。
したがって、この売り手市場に進出するためには、中古賃貸マンションをペット共生型マンションにリノベーションするのが早道だと言えそうです。共生型ならペット飼育者も肩身の狭い思いをしなくて済み、入居者に喜ばれるでしょう。
リノベーションも上述程度の設備を導入するだけなので小規模改装で済み、工事費もそれほどの負担にはならないと言われています。
それ以上に、ペット共生型マンション投資には次のようなメリットがあると言われています。
●空室になりにくいので稼働率が高い
物件の絶対数が少ないので募集すればすぐ満室になる可能性が高い。入居者は遠隔地への転勤などよほどの事情がない限り転居しない傾向が強い。また、空室ができても上記の理由ですぐ埋まる可能性が高い
●通常の賃貸マンションより収益性が高い
これも上記の理由で家賃を通常の賃貸マンションより高めに設定できる。また、入居者はペットが部屋を汚し原状回復に費用がかかることを認識しているので、通常の賃貸マンションより高めの敷金、更新料などの一時金を設定しやすい
●優良入居者を確保しやすい
都会のペット飼育者はペット飼育の社会ルールを遵守する意識が高い人が多いので、マンション生活のルールも守る人が多い。また、ペット共生型はペットを介して入居者同士がコミュニケーションしやすいのでマンションのコミュニティを形成しやすく、それが入居者・ペットのマナー向上助長環境にもなる
●立地にあまりこだわらなくて済む
ペット飼育者にとっての一番の関心事はペットの飼育環境。駅から遠く、通常の賃貸マンションなら入居者確保に苦労する立地でも、ペット共生型なら逆にプラス要因。近くにペットを散歩させられる公園、雑木林、河川敷などがあればなおプラス。また、立地特性から低額で物件を取得できる可能性も高い
ペット共生型マンションは、固定観念に囚われた多くのオーナーがあまり気づいていない穴場市場かも知れません。