レントロール(家賃明細表)
「レントロール(家賃明細表)」とは、賃貸不動産物件の賃貸条件を一覧できるようにした表のことです。レントロールを読み込むことで、現状の賃借条件や賃借人の状態がわかることはもちろんですが、将来、その条件が継続するのか変化していくのか、その可能性を予測することもできます。 そのため、マンション、アパート、ビルといった賃貸不動産物件を、特に「一棟買い」する場合には、その物件への投資が有効かどうかを見定めるための重要な資料となります。なお、レントロールの作成は、法令で決まっているものではありませんので公式に定められた書式も存在しません。
一般的なレントロールの記載事項
- ●部屋番号・契約日:部屋や賃借人を特定する情報
- ●部屋のタイプ(間取り)・専有面積・契約期間・賃借人の属性:部屋ごとの個性に関する情報
- ●賃料・共益費・敷金(保証金):部屋ごとの経済的価値に関する情報
※物件全体の「現況での年間賃貸料収入金額」「満室時の年間賃貸料収入」「稼働率」「表面利回り(現況)」「表面利回り(満室時)」も記載されていることがあります。
ただし、レントロールを読み込むだけで、その物件のことを理解できると思ったら大きな間違いです。レントロールは記載事項が定まっていないのですから、その物件を売却したいと考えているオーナーにとって都合が良くないことは書かれていないものと心得るべきです。
それでも、都合の悪いことを記載しないオーナーを責めるべきではありません。積極的に虚偽を記載してだまそうとしているわけではない以上、オーナーに責任はないからです。むしろ、その物件の購入を検討している投資家自身に、レントロールに記載されていない大切な事項を「書面以外の方法で精査する意識と根気」が求められているととらえましょう。
レントロールを読む際の注意点
投資をする際には、レントロールは以下のポイントに気を付けてチェックすると良いでしょう。
賃料、敷金(保証金)が同じ部屋タイプで、新しく入居した場合に下がっていないか?
家賃そのものが下がるパターンと、敷金の月数が減るパターンがあります。下がっている場合、旧来の入居者が退去した際に、将来の家賃収入が減る可能性が高くなります。このようなときは、新たな入居者の家賃を元にして、将来得られる利回りを計算することで、収入減に備えた対策を打てるでしょう。
もっとも、家賃の減額や敷金の負担を減らすことは、新たな入居者の獲得を容易にするためでもあります。新たな入居者がなかなか現れなければ、それが最たる収益減少の原因となるからです。まずは入居者獲得のために、家賃や敷金の水準が「周辺相場からかけ離れていないかどうか」をチェックする必要があります。
家賃のばらつきがないか?
同じ条件の部屋でも「家賃にばらつき」があるときは注意が必要です。例えば、新築・築浅時から同じ人が入居している部屋は、ほかの部屋より家賃が高いケースが多くなります。しかし、古くからの住人が退去した場合、その部屋の家賃は周辺相場などに合わせて再設定することになるでしょう。当然、家賃は下がることになりますから、収益にも大きな影響が出てしまいます。
また、オーナーの友人や親族などに相場よりも安く貸しているケースもあります。このような部屋に対しては家賃の再設定を交渉する余地がありますが、同時に退去の可能性も含めて考える必要があるでしょう。
入居年月が同じ部屋が多くないか?あるいは最近入居した部屋が多くないか?
入居年月が同じ部屋が多い場合、「一斉退去のリスク」が高いということです。特に学生が多い物件の場合、同じ年にごっそり退去する確率が高くなります。単身者向け物件で社会人と学生が混在していても、同じ年に大量に契約している場合、やはり何らかの条件を付帯して入居を促した可能性を考慮しましょう。
一方、最近入居の部屋が多いということは、物件価値を高めるために、売り主側が「無理なフリーレント
」などで入居させている可能性も考えられます。また、前述の事例とは正反対になりますが、親族などを高めの賃料で仮入居させ、物件の売却が決まるとすぐに退去するケースも見られますので注意が必要です。
入居者の「契約期間」に注意
賃貸借契約は、一般的には2年ごとの更新です。しかし、レントロールに記載されている各部屋の「契約期間」は、今現在のものしか記載されていません。つまり、現在の契約期間前の契約がどうなっていたのか、うかがい知ることはできないのです。例えば、契約期間が昨年からと記載されていても、その入居者は更新を続けて10年以上住んでいるかもしれませんし、以前は長期間空室だったかもしれません。表面的な契約期間だけで、その物件の「運営のしやすさ」を見極めることはできないのです。
入居者の属性はどのようになっているか?
入居者の属性は、賃貸借契約のリスクを左右する重要なポイントです。特に入居者の経済環境は家賃収入に関わる問題であるため、債務履行の確実性には常に注意を払う必要があります。一般的には、個人よりも法人、男性よりも女性の入居者が多いほうが、賃貸運営が安定しやすいとされています。
しかし、同一法人が複数の部屋を借りているような場合は注意しましょう。その法人の事業状況次第で契約が一斉に打ち切られる可能性があるからです。また、店舗や事務所などのテナントが入っているときは、それらからの家賃収入が占める割合が高い物件ほどリスクとなることを覚えておきましょう。
「想定家賃」に注意
実際に入居者が毎月支払っている家賃とは異なり、レントロールには「想定家賃」が記載されている場合があります。想定家賃は家賃保証
と関連している場合が多く、空室が生じた場合、この想定家賃をもとに保証がなされることがあります。保証会社は「想定家賃を低く抑えている」ことが一般的ですが、物件の価値を高めるために「一時的に高く設定している」場合もありますので、注意が求められます。
光熱費など家賃以外の収支を確認
水道料金が一括でオーナーに請求されている物件の場合、入居者は家賃とは別に月額固定で水道代を納めていることがほとんどです。しかし、レントロールにはこの収入も家賃として書かれているケースがあります。当然、その分は差し引いて計算しなければいけません。電気やケーブルテレビ、インターネット回線などの料金についても、入居者が個別に支払っているのか、家賃に含まれているか確かめておきましょう。
また、物件の敷地内に自動販売機や携帯電話のアンテナ、看板広告が設置されている場合、それらの収支についても聞いておく必要があります。自動販売機の場合、月々の売上が一定額を超えていないと電気代のほうが高くなる可能性があるからです。また、携帯電話のアンテナや看板広告は永続的なものととらえず、あくまで一時的な収入と考えておいたほうが良いでしょう。