マンション管理士

「マンション管理士(マン管)」とは、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」に規定された国家資格です。資格試験の運営や合格者への資格付与は、国土交通大臣が指定した「公益財団法人マンション管理センター」が行っています。
各都道府県には、地域のマンション管理士が所属するマンション管理士会が置かれ、さらに全国の会を束ねる「日本マンション管理士会連合会」も存在します。これらの団体が所属管理士への研修を行い、さらに一般利用者への広報活動も実施しています。


管理士という名称ではありますが、その実態は「マンションに、より住みやすくなるためのアドバイスをするコンサルタント」です。管理組合及び区分所有者などからの相談に対し、法律などの専門知識から助言や指導をするほか、さまざまな援助などを行います。中には、マンション管理組合などをクライアントとして独立開業し、経営的にも成功しているマンション管理士も存在します。


マンション管理士の業務内容は、書類上のことから住人の生活に関わることまで多岐にわたりますが、おもなものは下記のとおりです。


  • ・管理規約や使用細則の作成及び改正
  • 長期修繕計画 の策定及び見直し
  • ・管理組合の資産管理
  • ・管理業者への対応
  • ・入居者間のトラブルへの対処

一般的なマンション管理組合の構成員はその建物で暮らす住民ですから、決して不動産管理のプロではありません。知識を十分に有していない管理組合や区分所有者が抱える問題に対し、専門家としてサポートすることがマンション管理士の役割です。

マンション管理士と管理業務主任者との違い

なお、「一般社団法人マンション管理業協会」が管理業務主任者の資格試験や資格付与などを管理する「管理業務主任者」という資格も存在します。こちらの資格は「管理受託契約時における重要事項の説明」「受託した管理業務が正しく行われているかどうかのチェック及び報告」など、マンションに関するマネジメント業務を担うものです。どちらもマンションの運営を円滑に行うための資格ですが、管理業務主任者はマンション管理業者の社員が担当するケースが大半で、マンション管理士とは異なるものですから注意してください。

マンション管理士の資格が誕生した背景

今では、日本国民の約10%がマンションに住んでおり、特に地価の高い都市部ではマンション居住者が非常に多くなっています。こうした賃貸マンション需要の高まりに伴い、マンション管理業務の内容も多様化・複雑化してきました。また、高度経済成長期やバブル期に建てられた古いマンションが都市部を中心に多く残っており、老朽化に伴うマンショントラブルも散発しています。


今までは、マンションの管理組合担当者が管理に関する一般的な知識を身に付け、マンションごとの事情を把握しながら運営を行っていました。しかし、マンションを取り巻く環境が複雑化したこともあり、基本的な知識を身に付けるだけでも大きな負担となっています。そこで、管理組合はマンションの住人や設備などの問題を担当し、より専門的な事柄については専門家であるマンション管理士に相談するという体制を整えるようになりました。


このような背景から生まれたマンション管理士には、困ったときに相談をしてトラブルを解決する「専門のコンサルタント」としての役割が期待されています。もちろん、マンション管理には、建築や会計、法律などの幅広い知識が必要ですが、特定のジャンルについて深く精通しているエキスパートを目指す必要はありません。むしろ、実践的な場面で、必要に応じてほかの専門家(弁護士や公認会計士、建築士など)と連携する、あるいはどの専門家と連携すべきかを的確に判断する「マンション管理コーディネーター」であることが求められています。


マンション管理士は、医師や弁護士に比べ、歴史の長さや社会的な知名度は下回るかもしれません。しかし、マンション管理の社会的な重要性の高まりに合わせ、マンション管理士の需要や知名度、社会的信頼性も必然的に向上していくものと考えられます。

不動産投資家にマンション管理士の資格は必要か

不動産投資家自身がマンション管理士の資格を所持していると、長期修繕計画にまつわる費用計算がしやすくなるだけでなく、騒音・悪臭・ペット問題といったトラブルに細かく対処できるなど、さまざまなメリットがあります。マンションの老朽化が進む今、修繕や建替えの知識を有するマンション管理士の需要が高まっていることも事実です。


マンション管理士試験は、2001年12月に1回目が実施されて以降、毎年1回のペースで行われています。マンション管理士試験は難度が高いことで知られ、2016年度の合格率はわずか8.0%でした。例年10%を切る合格率で、同じく難関資格と呼ばれている行政書士よりも低い数字(2016年度の合格率9.95%)となっています。


不動産投資家の皆さんは資格取得を目指すのではなく、何かあったときマンション管理士に協力を仰ぐようにしましょう。投資判断に迷ったときや修繕で困ったとき、入居者が問題を起こしたときに、相談にのってもらえばいいのです。

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