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金銭消費貸借契約

pixta_6417692_M まず、「消費貸借」とは、民法で定められている貸し借りの契約の一種です。ほかでも替えが利く物(代替物)を借りて、そのあとに同種・同等・同量の物を返却することをいいます。例えば、自宅でパーティを開いてカレーの完成を待っているときに、ルーを買い忘れていたことに気付き、「とりあえず仲のいい隣人がストックしていたルーを借り、あとで返す約束をする」といった場合です。これは、ルーの消費貸借契約になります。
この場合、あとで「同種・同等・同量のルーを調達して、隣人に返却すべき」ということになります。ちなみに、同じ分量のカレー粉で返したとしても、受け取る隣人が納得すれば、「同種」「同等」の代替物で返したことになり有効です。

消費貸借のほぼ100%は、金銭が対象

実際に契約書などを作成して締結される消費貸借契約は、ほとんどすべてが金銭を対象とした消費貸借契約です。このような「金銭消費貸借契約」を簡単にいうと借金の契約です。
約束手形と引き替えに、予め額面から利息分を差し引いて金銭を貸す「手形貸し付け」や、企業の借金を一般から募る「社債の発行」なども、消費貸借に近接する制度といえます。
金銭消費貸借契約とは、期日までに返済することを約束した上で、消費するための金銭を借り入れるための契約です。おもに、銀行などの金融機関が貸主となることが多く、ローン契約と呼ばれることもあります。
金銭消費貸借契約は不動産投資における資金調達方法の1つで、契約の締結と同時に、貸主は借主の所有する不動産に抵当権設定契約を行うのが普通です。契約書には決められた書式がありませんが、一般的には以下のような内容となっています。

  • (1)債権者(貸主)の住所・氏名
  • (2)債務者(借主)の住所・氏名
  • (3)貸付金額
  • (4)貸付日
  • (5)返済の方法
  • (6)利息の定め
  • (7)遅延損害金の定め
  • (8)期限の利益喪失条項

利息制限法・出資法という縛り

(6)「利息の定め」は、金銭消費貸借で必ず定めなければならないわけではありません。家族や友人間でのお金の貸し借りで、利息は定めないことのほうが多く、そのような無利息の定めも法律的に有効です。しかし、特に利潤を上げることが目的である民間の金融機関から金銭を借り入れる場合、「利息の定め」はほぼ必須といえるでしょう。
なお、利息の値付けは、お金の貸し手が自由に設定できるわけではなく、出資法や利息制限法による制約があります。これは、お金に困った借り手の窮状に付け込んで、暴利を貪ろうとする貸し手が現れ、不公正な金銭消費貸借契約が結ばれることを規制するもので、「契約自由の原則」の例外といえます。

出資法では、営業を目的としてお金を貸し出す金融機関や個人が「20%」を超える利息を取る契約を結ぶことを、犯罪として規制しています(営業を目的としない個人は「109.5%」が上限)。
利息制限法は、制限を超える利息で金銭消費貸借契約を結んだ場合、その契約が民事的に無効となるよう定めています。借り手は、貸し手に対して支払いすぎた利息を「不当利得」として返還請求することができ、基準は以下のように定められています。

  • ・借入額10万円未満…年間利息20%が上限
  • ・借入額10万~100万円未満…年間利息18%が上限
  • ・借入額100万円以上…年間利息15%が上限

過払い金請求とは?

かつて、出資法で金融機関が定めることができる年間利息の上限は「29.2%」で、ほとんどの消費者金融やクレジットカード会社は、この上限年利で貸し出していました。この29.2%と、利息制限法での上限(15~20%)との差額を「グレーゾーン金利」といい、犯罪にはなりませんが民事上の不当利得になるという状況にあったのです。
この取りすぎの金利(過払い金)を、不当利得返還請求権(民法703条・704条)を理由にして、金融機関から事後的に取り戻そうとするのが「過払い金請求」です。最高裁判所が2006年1月13日判決で公式に認めました。なお、過払い金の返還請求権は、金銭消費貸借契約の取引きが終わってから(完済など)、10年で時効により消滅します。

期限の利益の喪失とは?

金銭消費貸借契約の中で最も注意を要するのが、(8)「期限の利益喪失条項」です。金銭消費貸借契約において債務者は、期限内に金銭を返済すれば良いことになります。裏を返せば、期日まで支払わなくても良いという、時間的な利益を得ている状態です。こうした契約を結んだ以上、債権者は期日よりまえに返済を迫ることはできません。これを「期限の利益」と呼びます。
しかし、これでは債務者の権利が強くなってしまうため、金銭消費貸借契約では期限の利益を無効にできる条項、いわゆる「期限の利益喪失条項」を定めるケースが大半です。これは民法でも認められている権利で、次のような場合は期限の利益を主張することはできず、債務者はその時点での残額をすべて返還すべき義務を負います(民法137条)。

  • ・債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
  • ・債務者が担保を滅失・損傷・減少させたとき
  • ・債務者が担保を差し出す義務を負う場合に、これを差し出さなかったとき

また、金融機関の中には、期限の利益喪失条項を拡大して、以下のような条項を個別に盛り込んでいるところもあります。

  • ・債務の履行を停滞したとき
  • ・国税滞納処分などの差し押さえを受けたとき
  • ・住所を変更した際、その旨を債権者に告知しないとき

期限の利益が喪失した場合、債権者は債務者に対して貸付金のすべてを請求できるだけでなく、担保権も行使することができます。「知らなかった」では済まされないことですから、金銭消費貸借契約を結ぶときはご注意ください。

民法大改正(2020年施行見込み)と金銭消費貸借契約

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2020年に施行される改正民法のうち、消費貸借契約をめぐる最も大きな改正は、「要物契約」から「諾成契約」に変更となった点です。
従来は、貸主と借主のあいだで、消費貸借の合意や契約書の取り交わしがあっただけでは契約が成立せず、貸主から借主へ目的物の引渡しがあって初めて成立するものとされてきました。
しかし、投資用マンション購入で金融機関の融資審査も通ったあとに、担当者から「なかったことにしてください。融資が実行されるまで契約は成立していませんので」と言われてしまったら困ってしまいます。そこで、民法改正では587条の2が新設され、契約書などの書面あるいは電磁的記録をもって行う消費貸借(金銭消費貸借を含む)は、目的物の引渡しがなくても、貸主と借主の合意があった時点で契約が成立したものとして扱うことになりました。

ただし、契約書の作成(契約成立)後、金銭などの目的物の引渡し前の段階で、借主のほうで資金需要がなくなる事情が生じた場合には、借主からの契約解除ができることになっています。なお、この契約解除によって貸主が本来受け取るべき利息を受け取れない損害が発生したとき、借主は賠償の負担をしなければなりません。また、目的物引渡し前に、当事者の一方が破産した場合も、もう一方の当事者から契約解除を通告できます。

民法589条の改正により、「消費貸借の予約」は廃止されます。このため、合意と目的物の引渡しのあいだに時間差がある場合も、消費貸借契約書を結んで契約を成立させておくことが原則となる点には注意してください。

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