不動産投資において、投資家の基準となる数字のひとつとして「GPI」が挙げられます。GPIとは「Gross Potential Income」を略した用語で、日本語に直すと「総潜在賃料収入」。つまり、賃貸不動産物件が1年間に得られる賃料の総収入(部屋数×家賃×12ヵ月分)を指します。この計算は、たとえ物件に空室や滞納といったマイナス要因が存在しても、それらを無視して行われる(つまり全室が1年間満室で家賃も滞りなく支払われると想定する)ことが最大の特徴です。
実際の賃貸物件(アパートやマンション等)が、1年間1日も途切れることなく全室満室で、入居者が滞りなく家賃を納める状態を築くことは、現実的ではありません。たとえ新築やリノベーション
した駅近の物件で、家賃を相場より安く設定したとしても、入居のタイミングはずれますし、退去に伴うクリーニングやリフォームによる空白期間が発生することは避けられない事実です。
そういった不確定要素を勘案して、例えば稼働率80%という設定にすれば、現実的な賃料収入額の算出は可能でしょう。しかし、不動産投資家は物件のGPIをしっかり把握しておく必要があります。それは、この数字がそのまま経営目標となるからです。
GPIは「投資した不動産が上げる最大の売上」ですから、その数字に限りなく近づけることが経営者(投資家)の目標になります。「入居者を増やす」「満足度を高めて長く住んでもらう」「リフォームをする」といった努力のすべては、経営目標(=GPI)を達成するために行うものです。管理会社
や地域の不動産業者と協力し、GPIに少しでも近づけることが不動産投資家のあるべき姿なのです。
GPIは、不動産投資を行う際の指標のひとつとしても重要です。対象の不動産の1年間の収支をまとめた「CFT(キャッシュフローツリー)」を作るとき、一番上に来る数字がGPIになります。そこから「賃料差異」や「空室による機会損失」「滞納による損失」などを引いた金額が、「EGI(Effective Gross Income) 」と呼ばれる「実効総収入 」です。そのEGIから税金、保険料、修繕費、管理会社への委託費、不動産会社への広告費、共用部分の備品代、事務費用などの「管理運営費」を引いた金額が「NOI(Net Operating Income) 」、つまり「償却前営業利益」になります。このNOIから「ADS(Annual Debt Service)」(=年間ローン返済額)を引いた数値が、1年間のキャッシュフロー というわけです。
CFT(キャッシュフローツリー) |
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GPI | 2-2 |
(+/-)賃料差異1 | 3-2 |
(-)空室損 | 4-2 |
(-)滞納損 | 5-2 |
(+)雑収入 | 6-2 |
EGI | 7-2 |
(-)管理運営費 | 8-2 |
NOI | 9-2 |
(-)ADS | 10-2 |
キャッシュフロー | その不動産が1年間で生む収益 |