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都圏の新築賃貸マンション供給が急増、マイナス金利政策追い風にした投資需要拡大が要因か

物件需要が衰えない賃貸マンション流通市場

同調査によると、2015年1年間に首都圏で供給された新築賃貸マンションは120物件・6056戸で、2014年の135物件・6240戸と比べると、物件数は11.1%減、戸数は2.9%減でした。物件価格上昇による投資意欲の減退を懸念したマンション開発側が、供給量を絞った結果と見られています。
ところが、この供給減がさらに物件価格押し上げ要因になったのか、2015年発売の投資用新築マンションの戸当たり平均価格は2742万円、平均平米単価は105.9万円で、前年に比べ平均価格は3.1%増、平均平米単価は2.5%増でした。
この結果は、物件の需要に対して供給が少なかった需給ギャップを感じさせます。


マンション開発側にこの需給ギャップを埋める意図があったのか、2016年上期(2016年1~6月)に供給された投資用新築マンションは83物件・4121戸となり、前年同期に比べ物件数は22.1%増、戸数は19.3%増となり、物件数、戸数共に急増しています。
戸当たり平均価格は2754万円で前年同期比1.7%増、平均平米単価は5.2%でした。供給を増やしても平均価格や平米単価の上昇傾向が続いているわけで、需要に供給が追い付かなかった状況を窺わせています。


では、中古マンション市場はどうなのでしょうか。
例えば、東日本レインズの『サマリーレポート/2016年4~6月期』(2016年7月9日発表)によると、2016年4~6月期の首都圏中古マンションの取引成約件数は9364件で、前年同期比4.9%増。その結果、5四半期連続の前年同期比増でした。同成約価格も2973万円で、前年同期比3.3%増。こちらは15四半期連続の前年同期比増でした。


また、日本不動産研究所の『住宅マーケットインデックス 2016年上期』(2016年9月8日発表)によると、東京都心5区の賃貸マンション平均賃料(新築・中古)は、すべてのタイプが前期比・前年同期比共に上昇。中でも大型タイプの上昇幅が最も大きく、近年のピークである2007年下期の水準(新築:5788円/平方メートル、中古:5170円/平方メートル)に近づき、ピーク期の98%まで上昇しました。
東京23区全体の平均賃料も都心5区と同様、すべてのタイプが前期比・前年同期比共に上昇。こちらも大型タイプの上昇幅が最も大きく、近年のピークである2008 年上期の水準(新築:5051円/平方メートル、中古:4491円/平方メートル)に近づき、ピーク期の95%まで上昇しました。


その結果、賃貸マンションの表面利回り低下傾向も終息に向かいつつあるようです。


投資意欲が衰えない理由

首都圏の賃貸マンション投資意欲に衰えが見られないのは、「安全な投資資産」である賃貸マンション自体の特性も背景にあるようです。
これに関して、不動産専門シンクタンクの都市未来総合研究所は、『不動産トピックス/2016年9月』(2016年9月5日発表)の中で、賃貸マンションの特性(「賃貸マンションの投資用資産としての特徴」)を、概略次のように分析しています。


●インカムゲインの安定性が高い
投資のインカムゲインに着目すると、賃貸住宅の賃料変動は不動産の他用途に比べ極めて緩やか。用途別の賃料指数を比較すると、バブル景気期のピークに至る過程で、賃貸住宅の賃料上昇はオフィスビル、店舗、ホテルに比べて小さく、ピーク以降の賃料下落局面でもオフィスビルやホテルの賃料が2015年まで3割程度下落したのに対し、賃貸住宅の賃料は1割弱の低下にとどまった。
この賃料変動の小ささは、賃貸住宅の典型的形態である賃貸マンションにおいて、「インカムゲインの安定性」という投資上の特徴を生み出している。


●物件取得価格が低いため分散投資が容易
国内不動産取引件数のうち、賃貸マンションは全体の3~5割を占めており、最大の不動産投資対象用途となっている。一方で、一物件当たり平均価格は他用途と比較して圧倒的に低い。例えばJ-REIT(国内主要な不動産機関投資家)の保有物件では、賃貸マンションの平均価格(取得価格ベース)は約15億円で、オフィスビル・店舗・物流施設の25%程度、ホテルの半分以下になっている。
賃貸マンションは物件価格が低いため、投資リスクコントロールに向けた分散投資が、他用途に比べ容易になっている。また、賃貸マンションは他用途に比べ市場流通量が多いため、複数物件から成るポートフォリオ構築も容易で、個々の物件リスクをコントロールすれば大規模な投資も可能になっている。


賃貸マンション投資の天気図は今後も晴れ?

賃貸マンションはこうした投資上の特性に加え、東京の積極的な都市再開発も、投資意欲を後押ししているようです。
東京都では人口増に対応するため、供給不足になっているマンション開発、道路・公園等の公共施設整備、業務施設の近代化など総合的な街作りを目指した「市街地再開発事業」を東京都全域約60地区(2015年7月31日現在)で進めており、「東京の再開発」は五輪開催後も続く予定です。
このため賃貸マンション需要は安定的かつ継続的に発生しており、賃貸マンション投資のチャンスが拡大し続けています。


日銀のマイナス金利政策の影響で、賃貸マンション一棟投資に対する銀行の貸出し姿勢も積極化していると言われています。この資金調達環境の好転を背景に、新たに一棟投資を始める個人投資も月を追って増加しているとも言われています。


当面の間、賃貸マンション投資の天気図は「晴天」が続きそうです。


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