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ようやく始まった賃貸住宅の省エネ化促進

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環境省は2016年1月、「賃貸住宅における省CO2促進モデル事業」(以下、モデル事業)の執行団体となる補助事業者の公募を開始しました。 このモデル事業は同省が2015年8月に発表した「2016年度環境省概算要求」に盛り込んだ国土交通省との連携事業。公募はモデル事業の予算成立が前提となっており、不動産業界ではその成り行きが注目されています。

賃貸住宅における省CO2促進モデル事業とは

これまで住宅・建築物の税制優遇による省エネ化施策が各種行われてきましたが、大半が住宅所有者の自主性に委ねる施策のため、省エネ住宅・建築物の普及が遅れているのが実情です。

特に新規住宅着工件数の約4割を占める賃貸住宅は省エネ性能の価値評価が低く、賃料アップや入居者獲得手段にならないため、省エネ型賃貸住宅の開発・供給が遅れているといわれています。


そこで低炭素化性能に優れた賃貸住宅の供給促進と、市場において低炭素化の価値が評価されるための普及啓発を一体的に行い、賃貸住宅市場の省エネ化を進めようというものです。

モデル事業では2016~2018年度の3年間を事業実施期間とし、期間中は「賃貸住宅を建築・監理する者」を対象に、以下に挙げる①の賃貸住宅に対しては2分の1(上限額60万円/戸)、②の賃貸住宅に対しては3分の1(上限額30万円/戸)の補助金を支給するとしています。これが1月から環境省が行っている「補助事業者の公募」です。


モデル事業の概要は、

●賃貸住宅について一定の断熱性能を満たし、かつ住宅の省エネ基準よりも①「20%以上」、もしくは②「10%以上」と設定された数値を満たすべくCO2排出量が少ない賃貸住宅を新築又は既築住宅を改修する場合に、追加的に必要となる給湯、空調、照明設備等の高効率化のために要する費用の一部を補助する

●本事業を活用して新築・改修された賃貸住宅については、住宅性能の表示やインターネット等を活用した効果の普及やPRを行うこととする

●さらに本事業と並行して賃貸住宅の紹介・斡旋を行っている事業者と連携し、賃貸住宅の検索時に低炭素型であることをメルクマールとした検索を可能とすることで、市場全体の低炭素化を官民連携で行う

――などとなっています。


また、環境省はモデル事業により、

●持ち家のみならず、賃貸住宅市場においても最先端の低炭素型住宅が供給されることにより、賃貸住宅市場の低炭素化の端緒が開ける

●低炭素型賃貸住宅の表示や検索条件の整備、断熱性能から生じる快適性や低廉な光熱費など普及啓発を一体化して行うことで、消費者においても低炭素型賃貸住宅を選好する機運が高まり、自発的な低炭素型賃貸住宅市場展開につなげられる

――などの効果が期待されるとしています。


住宅省エネ化の現状

住宅の性能向上に関する近年の諸制度の推移をかいつまんで見てみると、2000年に「品確法(住宅品質確保促進法)」が施行され、工務店・住宅メーカー・分譲住宅会社などの住宅供給者が、新築住宅の瑕疵保証を10年間にわたり行うことが義務づけられました。


同法に基づき「住宅性能表示制度」が導入され、省エネ性能や住宅の構造的な強さ、耐火性能、バリアフリーなどの認定基準を満たした住宅は、同制度認定住宅の表示ができるようになりました。

2009年には「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行され、同法に基づく「長期優良住宅認定制度」が導入されました。同制度は住宅性能表示制度準拠の認定基準を満たした住宅を行政区の自治体に申請すれば、長期にわたり良好な状態で使用できる「長期優良住宅」に認定され、税制優遇措置の適用対象となる制度です。


そして2012年に「低炭素促進法(都市の低炭素化の促進に関する法律)」が施行され、同法に基づく「低炭素建築物認定制度」が導入されました。同制度は省エネ法の省エネ基準に比べ一次エネルギー消費量がマイナス10%以上、その他の低炭素化に資する措置が講じられていることなど、所定の認定基準を満たした住宅を行政区の自治体に申請すれば「低炭素建築物」に認定され、税制優遇措置の適用対象となる制度です。


このように住宅省エネ化推進の制度整備は一応進んでいるのですが、「税優遇措置のレベルが低いなど、住宅の施主・購入者は制度導入のメリットをあまり感じられない。このため省エネ性能や耐久性より、どうしても建築費を重視してしまう」(不動産市場調査関係者)といわれています。


実際、資源エネルギー庁の『2014年度エネルギー需給実績(速報)』によると、部門別最終エネルギー消費は2005~2014年度の間、産業部門も運輸部門もエネルギー消費量が下がっているのに、家庭部門だけが横ばいで推移しています。その家庭部門はエネルギー消費量全体の14.2%(2014年度)を占めています。

住宅省エネ化推進の抜本的対策、すなわち「住宅の省エネ基準の適合義務化が求められている」(国土交通省「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策の在り方について/第一次答申)とされているゆえんといえます。


住宅省エネ化補助事業促進の動きは賃貸マンション差別化の追い風

国土交通省の『平成25年住生活総合調査(速報集計)結果』によると、「住宅の個別要素に対する不満率」は「高齢者などへの配慮(バリアフリー化など)」がトップの53.5%で、続いて「地震時の住宅の安全性」48.6%、「冷暖房などの省エネルギー性」46.7%、「住宅の傷みの少なさ」45.2%、「住宅の断熱性や気密性」44.0%など、住宅の省エネ性能や耐久性に対する不満が上位を占めています。


一方、「住宅の広さや間取り」26.8%、「居間など主な居住室の採光」26.6%、「外部からのプライバシー確保」24.7%など、住宅の快適性に対する不満はいずれも最下位レベルになっています。これは快適性に対する住宅性能が向上したからとみられています。

これを見ると、省エネ性、耐久性など住宅の基本性能に対する不満の高さがうかがえます。


こうした状況の中、近年は「賃貸エコマンション」の人気が上昇中といわれています。

エコマンションは上記調査結果にみられる不満を背景に自然発生的に生まれたトレンドなので、エコマンションの明確な定義はありません。しかし、一般には建物の断熱性、設備の省エネ性、建物の長寿命化、緑化の4つの性能を備えた賃貸マンションであるといわれています。

既存の賃貸マンションをエコマンションに生まれ変わらせるのもそれほど大変ではなく、大半が設備更新程度の小規模なリフォームで済むといわれています。 具体的には次のようなリフォームのようです。


[建物の断熱性]

断熱性の高い賃貸マンションは、夏は涼しく冬は暖かく、おのずとCO2排出の主因となるエアコンの使用時間短縮や設定温度の適正化につながります。

そこで床の断熱改修、単層ガラス窓から複層ガラス窓への取り替え、紫外線遮断ガラス窓への取り替え、あるいは窓ガラスへの紫外線遮断シールの貼り付けなどを行えば、建物の断熱性が向上します。


[設備の省エネ性]

既存設備の更新により大きく改善されます。例えば節水型便器・節水型温水洗浄便器への更新、LED照明器具への更新、食洗機の導入(手洗いより節水できる)、高効率ガスコンロへの更新、高効率ガス給湯器への更新、省エネ型エアコンへの更新などです。


[建物の長寿命化]

建物管理の厳密化と建物の定期点検・修繕を適正に実施するだけで建物の長寿命化ができるといわれています。


[緑化]

近年の大型分譲マンションでは屋上庭園、ビオトープ、緑地などの設置が進んでいるようですが、賃貸マンションの場合はこうした大掛かりな緑化は困難だといわれています。

そこでエントランスやアプローチへの植栽配置、ベランダのプランター緑化、壁面に蔦を這わせる壁面緑化などをすれば、夏の室内温度を下げられるともいわれています。またこうした形での緑化は「手作りの賃貸エコマンション」として、オーナーのエコ意識の高さのアピールにもなるといわれています。


近年の分譲マンションは建物の省エネ性能や耐久性などの基本性能が向上しているので、賃貸マンションはそうした面でどうしても見劣りがします。

しかし賃貸エコマンションなら分譲マンションとさほど見劣りがせず、入居希望者にマンションの基本性能の高さをアピールできるようです。それは通常の賃貸マンションとの大きな差別化要素にもつながります。


とはいえ、「それは分かっているけど……」が賃貸マンションオーナーの本音かも知れません。

エコマンションへの改修には、やはりそれなりの設備投資が必要になるからです。特に空室が多い築古マンションの場合は修繕費がかさみ、収益が低下していることもあり、オーナーは決断に悩むことでしょう。

そうした意味からも、今回の環境省のモデル事業は賃貸住宅の抜本的省エネ化推進に向けた試金石だとみられています。賃貸住宅の省エネ化を加速させるためにはこれまでのような小出しの助成ではなく、賃貸マンションオーナーの決断の後押しとなるような省エネ化推進助成制度の充実が、国に求められているようです。


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