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般論の空室対策が効果を生まないたった1つの理由

オーナーたちを惑わせる現実離れの空室対策

―― 総務省の『平成25年住宅・土地統計調査結果』によると、日本全国にある空き家820万戸のうち賃貸用住宅が429万戸で空き家全体の52.3%も占めています。その多くは、空室率低下に歯止めをかけられず歳月が経過するうちに出口を見失い、空き家になってしまったと見られています。
オーナーが苦労して取得した大事な賃貸物件を空き家にさせないためにも空室対策が重要なわけですが、なぜ空室対策に失敗するケースが多いのでしょうか。

舟山
弊社のようにプロパティマネジメントの一環として空室対策を行っている者の目から見ると、一般に言われている空室対策は現実感がないというか、「空室対策はこうあるべし」の固定観念を語っているようにしか思えてなりません。


―― そうですね。一般に言われている空室対策は「集客力の高い仲介会社に入居者募集を依頼する」、「人気のある間取りや設備にする」、「入居したくなるような魅力的なサービスをつける」などで、よくよく考えてみれば大半が当たり前のことを言っているに過ぎません。
またその方法として、例えば「集客力の高い仲介会社に入居者募集を依頼する」では賃貸物件に強い仲介会社の見分け方、仲介会社の動かし方などのハウツーを縷々(るる)解説しているだけですものね

舟山
要は「集客力の高い仲介会社に入居者募集を依頼した結果、空室率が低下した、あるいは満室になった」と結果を述べているだけで、実は空室対策の説明にはなっていないのです。


―― なぜ実践的な空室対策の説明ができないのでしょうか。
舟山
簡単に申し上げれば、仮に空室物件が100件あれば100通りの空室対策があるのです。ですから、「これが空室対策成功の方程式だ」のような形で一般論化すること自体が不可能なのです。
「こうあるべし」の一律的な固定観念で空室対策はできません。また残念ながら、過去の成功体験も参考にはなりません。なぜなら賃貸物件市場は日々変化しているからです。
空室が発生する条件としては、物件が立地するエリアにおける賃貸物件の市況感や需給バランス、空室が発生している物件と周辺にある競合物件の関係など、さまざまな要素が複雑に絡みます。
したがって、例えば2015年8月に空室率低下に成功したオーナーA様の成功例を、2016年3月に同一エリアでの空室で悩んでいるオーナーB様の空室対策に応用できるようなものではないのです。


空室対策の第一歩は原因特定から

―― では実践的な空室対策とはどのようなものなのでしょうか。
舟山
物事には正常と異常が存在します。そして異常な事態の発生には必ず原因があります。空室もこれと同じです。


―― なるほど。空室発生とは異常事態に他ならない訳ですね。
舟山
そうです。空室の発生には必ずその原因があります。
その原因を突き止めもせず、ただ「集客力の高い仲介会社に入居者募集を依頼する」、「人気のある間取りや設備にする」などの結果に飛びついても何の効果もないし、無駄な経費を使うだけです。


―― 言われてみればそうですね。空室が発生するとオーナーは直ちに「立地が悪いのか」「家賃が高いのか」「間取りに人気がないのか」「入居者募集のやり方が悪いから仲介会社を変えてみようか」など、あれこれ思い悩み、ハウツー本やセミナーで勉強した空室対策にばかり気を取られてしまって、「まず原因を特定しなければ」と考えるオーナーは稀です。
ところで、原因特定はどのようにしてするのですか。


舟山
第一段階はデータによる事実把握です。
当該物件に対して入居希望者のアクセスが何件あって、そのうち問い合わせが何件あったのか。また、アクセスと問い合わせはどの仲介会社にあったのかなどを、まずデータ調査で事実把握します。
次に当該物件立地エリアの成約事例や成約物件の特徴を徹底的に集められる限り収集し、各成約事例と当該物件とのギャップを1つずつチェックします。


―― それで空室原因の特定ができるのですか。
舟山
はい、できます。
成約事例、すなわち競合物件に対して当該物件の家賃や共益費は適正なのか、間取りや設備は適正なのかなどの事実を調べるからです。
また家賃が適正だとしても、敷金・礼金、仲介会社への広告料なども適正か否かを調べなければなりません。
例えば当該物件の敷金・礼金が家賃の2カ月分で広告料が1カ月分だったとしましょう。一方で競合物件の敷金・礼金がゼロで広告料が1カ月分だとすると、必然的に競合物件へ潜在入居者は流れてゆくので、これでは募集競争力が弱くなることになります。
要は、当該物件と競合物件とを比較して、すべての比較項目が適正か否かをチェックするのです。
不適正な項目を改善しないと、どんなに経費をかけて考えられる限りの空室対策をしても、空室は埋まらないのです。
しかし中には、このデータ調査ですべての項目が適正なのに、空室が出ているケースもあります。


―― その場合はどうされるのですか。

舟山
直ちに現場調査をします。空室原因が現場に隠れているからです。


机上で分からないことは足を使って調査すべし

―― 話が前後しますが、第一段階のデータ調査はどの時点で行うのですか? 空室発生と同時ですか。

舟山
いいえ。入居者移動期の春(3・4月)、秋(9・10月)などは、一時的に空室が発生する季節的要因があります。また、1・2月の厳寒期や7・8月の盛夏期は部屋探しをする人が少なくなるので、入居者退去後の部屋がすぐに埋まるのは稀です。
ですから弊社の場合、解約受付した2周間以内にデータ調査をして、適正な条件や競争力が高まった状況で募集を開始します。しかし、空室期間が2カ月を過ぎると弊社は異常事態が発生していると判断し、直ちに現地調査を行います。


―― データ調査で入居者の確保ができない場合は、現場調査という段取りですね。現場調査はどのように行っておられるのですか。
舟山
当該物件から半径2~4キロメートル以内の競合物件の状況を1棟ずつ歩いて見て回ります。
具体的には1棟ごとにマンション名、外観・外構、陽当たり、共用設備、住戸数と空室数、グレード、生活インフラなどの状況を視認し、現場で弊社独自の調査票に落とし込みます。
それを持ち帰りネットなどで競合物件ごとに最寄り駅までの徒歩分数、間取り、家賃などの公開物件データを調べ、これらをクロス集計します。
次に空室率が低い、あるいは満室の競合物件と当該物件のどこが、何が違うのかを比較分析します。


―― 随分と細かい作業ですし、コストもかかりますね。

舟山
弊社は物件管理業務を受託している管理会社さんとは違い、オーナー様からお預かりした運用不動産の投資目的を最適な形で実現するためにプロパティマネジメント契約を結び、オーナー様のキャッシュフロー最大化を目的とした経営を代行しています。
ですから、原因特定にそれ相応のコストをかけるのは当然だと考えています。また現場で隠れている原因は現場に行かなければ発見できないし、有効な空室対策も立てられないのです。
弊社にすればコスト云々の問題ではありません。
また、例えば机上の比較調査では『2DKの当該物件の空室率が高くて競合物件の空室率は低い』といった結果であっても、現場調査をすると『競合物件の2DKの空室率も高かった。しかし競合物件の1LDKは満室だった』ということが明らかになったりします。


―― そうした状況は机上のデータ調査では見えませんね。

舟山
現場に行ってこそ初めて見えるものがあります。
この場合は、2DKは需要が少なく、1LDKは需要が多いのに供給が不足しているので希少物件になっていることを示しています。したがって、2DKの当該物件を1LDKに間取り変更すれば当該物件の空室を解消できるとの判断になります。
無論、設備更新をする、外壁を改修してグレード感を高める、アメニティを充実させるなどの付随対策の検討も必要ですが、肝心なことは需給のギャップを埋める案をコストが安くて効果の高そうであろう対策から優先して講じる。こうした一連の流れが、空室対策の基本になる考え方です。


空室対策で重要なのは三現主義

―― 受給ギャップを埋める対策を施さず、一般論で言われている「有効な空室対策」をあれこれ講じても、オーナーにとってはすべて無駄な出費に終わる訳ですね。
舟山
その意味では、空室対策投資ではコストパフォーマンスも重要です。空室対策で赤字経営になったら本末転倒ですから。
空室の原因が家賃でないのなら家賃を下げる必要はありませんし、設備が原因でないのなら設備更新は不要です。必要最小限の投資で空室を改善するのが空室対策のもう1つの基本と言えます。


――経営改革の基本は現場、現物、現実の「三現主義」と言われます。御社の空室対策は三現主義に則っているようにも思えます。
舟山
まさしく、弊社では業務遂行の基本を三現主義に置いています。
オーナー様の資産設計、投資戦略、課題設定、問題解決のすべてにおいて不動産投資市場の現場、現物、現実に基づいた分析と判断を行っています。


―― それは御社のビジネスモデルである「不動産投資のコンサルティング」のフレームワークでもあるようですね。
舟山
コンサルティングの基本は事実把握、すなわち現場、現物、現実です。ですから弊社の空室対策では事実しか問題にしません。事実に基づいた仮説を立てて検証することにより、希望的観測や思い込み思考を排除するよう務めています。
一般的な管理会社さんが当たり前のように行なっている、「とりあえず、以前の家賃と同じ設定で募集を開始してみましょう」といった何の根拠もない安易な家賃設定の提案は致しません。
市況を始めとする不動産投資の各種市場調査データと、家賃収入など当該物件の各種業績データを徹底的に収集し、事実に基づいて「これなら論理的に入居者の確保ができるであろう」といった仮説を立て、実行します。
それでも空室が埋まらなければ、原点回帰で現場・現物から得られる事実を徹底的に収集し、収集した事実を現実に照らし合わせて徹底的に分析し、そこから得られた結論を対策に反映する。
これが弊社の空室対策のすべてと言っても過言ではありません。

「ここまでやれば良い」という上限は設けておりません。オーナー様の人生が左右されるような資産を預かり、マンション経営の一端を担っているわけですから。徹底的に責任を持ってやり抜きます。


―― だからこそ、現実的で実践的な空室対策ができるのですね。巷にあふれる一般論の空室対策とまったく異なる視点は、まさに現場で生きた情報を扱う御社ならではと言えますね。本日も貴重なお話をありがとうございました。


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