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GLOSSARY
不動産用語集
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総合課税/分離課税

pixta_12764256_M 日本の所得税は、所得が増えれば増えるほど、課される税率が上がっていく「超過累進課税制度」が採用されています。例えば、一般的に年間の所得が300万円の人も1,000万円の人も、日常生活に必要な額は、所得の差ほど大きくは変わらないといえます。よって、所得1,000万円の人のほうが、多くの所得税を負担しても十分に持ちこたえるだけの経済力(担税力)を持っているとされます。しかし、年間1,000万円の所得が一時的なものだったり、退職したあとは収益が断たれたりするような場合は、必ずしも高い担税力を持っているとはいえないのかもしれません。超過累進課税制度は、担税力が高い人(収入が高い人)ほど、多くの所得税の負担を引き受けることで、実質的な公平を図ろうとする近代的な租税システムだとされています(この点が、担税力に関係なく、すべての国民に同じ税率を適用する消費税などの間接税とは大きく異なります)。そして、国民の得た所得(収入-経費など)に対し、どのように所得税を課税すれば「社会全体で実質的な公平」を図れるかを考えて、「総合課税」と「分離課税」という、2つの方向性の使い分けがなされています。

総合課税

ある人の「所得の合計金額」に対して課税することを総合課税といい、これが原則的な扱いになります。総合課税の対象となる所得は、次の8種類です。

  • ・会社員・パートやアルバイトの給与所得
  • ・個人事業主の事業所得 ※1
  • 不動産所得(地代収入、家賃収入など)
  • 譲渡所得(土地・建物・株式の譲渡所得は除く) ※1 ※2
  • ・株式などの配当所得 ※2
  • ・利子所得 ※2
  • ・一時所得(借家から出て行く人が受け取る立退料、固定資産税の前納報奨金など) ※2
  • ・雑所得(年金、執筆や講演を職業とせずに受け取る原稿料や講演報酬など) ※1 ※2

  • ※1 一定の先物取引の差金等決済に関する所得は例外的に申告分離課税となります。
  • ※2 一部例外的に分離課税となる場合があります。

特定の所得ごとに個別に計算を行って、課税額を求める方法を分離課税といいます。所得額を分散する分、総合課税に比べれば適用される税率が低くなる場合があり、全体として所得税額も下がる傾向があります。分離課税の対象となる所得は、一度に多くの額が入ってくるも、その後は継続的な利益が見込めない種類のものが大半です。それは、所得額は高くても担税力が高いとまではいえず、総合課税で高額の所得税を負担させるのは過酷であると考えられているからです。分離課税は、「申告分離課税」と「源泉分離課税」の2種類があります。申告分離課税とは、分離課税によって算出した所得税について、翌年の確定申告によってその税額を納めることをいいます。申告分離課税の対象となる所得の例は、以下のとおりです。

  • <申告分離課税の対象となる所得例>
  • ・退職所得(退職金など)
  • ・土地・建物の譲渡所得(売却益など)
  • ・株式の譲渡所得
  • ・山林所得(山林を取得して5年経過以降に、立木や伐採した材木を譲渡して得た所得) ※取得後5年内であれば事業所得であり、総合課税になります

分離課税

源泉分離課税とは、源泉徴収(支払者が、所得税分を支払額から天引きすること。天引きされた所得税分は支払者によって納税される)によって、納めるべき所得税が差し引かれた状態で所得を得るという課税制度です。収入からすでに所得税が差し引かれているため、確定申告や納税手続きを行う必要はありません。源泉分離課税の対象となる所得には、次のようなものがあります。

  • <源泉分離課税の対象となる所得例>
  • ・懸賞金付き預貯金を預け入れた場合に受け取った懸賞金
  • ・一般の割引債の償還差益
  • ・証券投資信託(公社債投資信託を除く)の収益の分配金による配当所得
  • ・利子所得のうち、金融機関の預貯金に関する利子
  • ・利子所得のうち、いわゆる金融類似商品の利息(抵当証券の利息など)による所得
  • ・株式譲渡所得で、「譲渡所得等の源泉分離課税の選択申告書」を税務署に提出した場合
  • ・利益配当や剰余金の分配に関する所得で、「配当所得の源泉分離課税の選択申告書」を税務署に提出した場合

※例えば「利子所得」の場合、所得税法上は総合課税の対象となっているものの、租税特別措置法の規定により、所得税15.315%(復興特別所得税を含む)が源泉徴収されたあとに、金融機関から口座に利子が振り込まれます。なお、このほか、地方税も5%源泉徴収されます。

不動産投資の場合

不動産投資に関わる税金ですと、地代や家賃などの不動産収入は不動産所得として「総合課税の対象」となります。別に給与所得や事業所得などがある場合も、それらと合算して「超過累進課税制度による税額が適用」されます。超過累進課税制度は、所得額が増えるに従い段階的に税率も上がる累進課税の一種ですが、「段階ごとに定められた税率によって課税額が決まる」という特徴があります。少し複雑ですが、例えば不動産所得が2,000万円の場合、以下のような計算式で税額が決まるのです。

所得税の速算表(国税庁)

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え、330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え、695万円以下 20% 42万7,500円
695万円を超え、900万円以下 23% 63万6,000円
900万円を超え、1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円を超え、4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円
※2016年4月1日現在

  • ・2,000万円の不動産所得にかかる所得税の計算式
  • a 195万円×5%=97,500円
  • b (330ー195)万円×10%=13万5,000円
  • c (695-330)万円×20%=73万円
  • d (900-695)万円×23%=47万1,500円
  • e (1,800-900)万円×33%=297万円
  • f (2,000-1,800)万円×40%=80万円
  • a+b+c+d+e+f=520万4,000円


このため、不動産売却などで一時的に大きな収入があった場合、総合課税による確定申告を行うと、ほかの所得に対しても高い税率が適用される可能性があります。このような場合は、「土地・建物の譲渡所得に対して申告分離課税を選択」し、ほかの所得と切り離すことで「納税額を最適化」できるでしょう。

日本以外に生活拠点がある投資家と総合課税の関係

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交通機関の発達により、国内外の行き来が容易になり、日本国籍があっても日本以外の国を生活拠点にしている人が増えました。税法では、日本国内に「住所(客観的事実によって、個人の生活の本拠といえる場所)」があるか、あるいは現時点まで1年以上にわたって日本国内に「居所(生活の本拠とはいえないが、現実に住んでいる場所)」がある人を「居住者」といい、日本の法制度における税金を課しています。

それ以外の人は「非居住者」であり、日本の法制度における税金は課されませんが、日本国内で不動産投資事業などでの収益がある場合は、課税されることになります。その課税体系は、非居住者が日本国内に「恒久的施設」を保有しているかどうかがポイントです。
これは、国際税法上、「恒久的施設なければ課税なし」といわれるため、日本国内の非居住者が、日本国内に恒久的施設を保有しているかどうかは重要な区分となります。なお、税法上の恒久的施設とは「PE」(Permanent Establishment)といわれ、次のようなものを指します。

  • <恒久的施設(PE)>
  • ・支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫など(ただし、資産の購入や保管、事業遂行の補助的活動にのみ使われる場所は含みません)
  • ・1年を超える期間、建設作業等のための役務の提供に使用される場所
  • ・非居住者のために、日本国内でその事業に関し契約を結んだり、在庫商品の保管や出入庫管理を行ったりする権限のある代理人などがいる施設

恒久的施設かどうかは、形式的な名目よりも実質的な機能で判断します。例えば、ホテルの一室は、一般的には一時的な居住スペースであり、恒久的施設とは言いがたいですが、実質的に支店や事業所としての継続的なビジネス活動の拠点となっている場合は、税法上の恒久的施設に該当します。

なお、日本国内の恒久的施設に帰属する非居住者の不動産所得は、つねに総合課税としての課税がなされます。日本国内の恒久的施設に帰属しない非居住者の所得(不動産所得を含みます)、あるいは日本国内に恒久的施設を保有していない非居住者の所得については、以下のものが総合課税の対象となります。

  • <総合課税の対象となる所得>
  • ・資産の運用、保有により生ずる所得
  • ・資産の譲渡により生ずる所得
  • ・土地等の譲渡による所得
  • ・人的役務提供事業の所得
  • ・不動産の賃料等(不動産所得)
  • ・そのほか、利子、配当、給与、事業広告宣伝報酬などを除く国内源泉所得

ちなみに、上記の場合の所得税の源泉徴収率は、以下のとおりです。

  • ・不動産の賃料等(不動産所得等)・人的役務提供事業の所得…20%
  • ・土地などの譲渡による所得…10%
  • ・そのほかの総合課税対象所得…源泉徴収なし

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