日本の所得税は、所得が増えれば増えるほど、課される税率が上がっていく「超過累進課税制度」が採用されています。例えば、一般的に年間の所得が300万円の人も1,000万円の人も、日常生活に必要な額は、所得の差ほど大きくは変わらないといえます。よって、所得1,000万円の人のほうが、多くの所得税を負担しても十分に持ちこたえるだけの経済力(担税力)を持っているとされます。しかし、年間1,000万円の所得が一時的なものだったり、退職したあとは収益が断たれたりするような場合は、必ずしも高い担税力を持っているとはいえないのかもしれません。超過累進課税制度は、担税力が高い人(収入が高い人)ほど、多くの所得税の負担を引き受けることで、実質的な公平を図ろうとする近代的な租税システムだとされています(この点が、担税力に関係なく、すべての国民に同じ税率を適用する消費税などの間接税とは大きく異なります)。そして、国民の得た所得(収入-経費など)に対し、どのように所得税を課税すれば「社会全体で実質的な公平」を図れるかを考えて、「総合課税」と「分離課税」という、2つの方向性の使い分けがなされています。
ある人の「所得の合計金額」に対して課税することを総合課税といい、これが原則的な扱いになります。総合課税の対象となる所得は、次の8種類です。
源泉分離課税とは、源泉徴収(支払者が、所得税分を支払額から天引きすること。天引きされた所得税分は支払者によって納税される)によって、納めるべき所得税が差し引かれた状態で所得を得るという課税制度です。収入からすでに所得税が差し引かれているため、確定申告や納税手続きを行う必要はありません。源泉分離課税の対象となる所得には、次のようなものがあります。
不動産投資に関わる税金ですと、地代や家賃などの不動産収入は不動産所得として「総合課税の対象」となります。別に給与所得や事業所得などがある場合も、それらと合算して「超過累進課税制度による税額が適用」されます。超過累進課税制度は、所得額が増えるに従い段階的に税率も上がる累進課税の一種ですが、「段階ごとに定められた税率によって課税額が決まる」という特徴があります。少し複雑ですが、例えば不動産所得が2,000万円の場合、以下のような計算式で税額が決まるのです。
所得税の速算表(国税庁)
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え、330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え、695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円を超え、900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円を超え、1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円を超え、4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
交通機関の発達により、国内外の行き来が容易になり、日本国籍があっても日本以外の国を生活拠点にしている人が増えました。税法では、日本国内に「住所(客観的事実によって、個人の生活の本拠といえる場所)」があるか、あるいは現時点まで1年以上にわたって日本国内に「居所(生活の本拠とはいえないが、現実に住んでいる場所)」がある人を「居住者」といい、日本の法制度における税金を課しています。
それ以外の人は「非居住者」であり、日本の法制度における税金は課されませんが、日本国内で不動産投資事業などでの収益がある場合は、課税されることになります。その課税体系は、非居住者が日本国内に「恒久的施設」を保有しているかどうかがポイントです。
これは、国際税法上、「恒久的施設なければ課税なし」といわれるため、日本国内の非居住者が、日本国内に恒久的施設を保有しているかどうかは重要な区分となります。なお、税法上の恒久的施設とは「PE」(Permanent Establishment)といわれ、次のようなものを指します。