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GLOSSARY
不動産用語集
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不動産鑑定評価

real-estate-appraisal01.jpg 「不動産鑑定評価」とは、1963年に制定された「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき、その翌年に定められた「不動産鑑定評価基準」に沿って、不動産の価値を客観的に見積もることをいいます。国家試験である不動産鑑定士試験に合格し、国土交通省の不動産鑑定士名簿に登録された不動産鑑定士が不動産の経済価値を判定し、価額に表示します。

国土交通省の不動産鑑定評価基準には、「不動産の現実の取引価格等は、取引等の必要に応じて個別的に形成されるのが通常であり、しかもそれは個別的な事情に左右されがちのものであって、このような取引価格等から不動産の適正な価格を見出すことは一般の人には非常に困難である。したがって、不動産の適正な価格については専門家としての不動産鑑定士の鑑定評価活動が必要となるものである」と記述されています(不動産鑑定基準/第1章第2節・不動産とその価格の特徴)。
つまり、不動産鑑定評価とは、当該不動産の「客観的に見て適正な価格」を評価するための鑑定であることがわかります。

なお、不動産鑑定評価は不動産鑑定士だけに許された独占業務であり、特定の不動産を鑑定評価してもらうためには、国土交通大臣登録及び都道府県知事登録の不動産鑑定業者(不動産鑑定士が所属する業者)に鑑定評価を依頼し、不動産鑑定評価書を作成してもらう必要があります。また、この際、相応の費用が発生します。

不動産の価値は、プロが査定してもひとつに決まらない

一般的に、ある特定の商品は、ある特定の値付けをされて販売されます。つまり「一物一価」で取引きされるのです。しかし、不動産は、ひとつとして同じものが存在しない「オンリーワン」の資産といえます。たとえ似たような形や条件であっても「近くにどのような建物や街、駅や道路があるか」によって、価値が大きく変わってくるのです。
また、買い手と売り手の気分や駆け引きでも、個別の取引価格が大きく変化します。事情があって売るのを焦るあまり、安く買い叩かれることもありますし、買い手が気に入って特定の不動産にこだわったために、売り手に足元を見られて価格を吊り上げられることもあります。

十分な現場調査能力があり、不動産鑑定評価基準を使いこなせるプロの不動産鑑定士であっても、ある不動産の評価額をひとつに定めることは容易ではありません。そのため、鑑定士によって鑑定結果にある程度のぶれが生じることを予め知っておく必要があるでしょう。


不動産の鑑定評価が不当と判断される場合もある

鑑定結果は鑑定士次第ですが、その内容に不満を持たれることもあるでしょう。実際に「不動産の鑑定結果」を不服(不当)とする裁判も起きています。近年では「地方自治体が買い取った土地が、不動産鑑定士の不当鑑定によって異様に高く評価されており、地方自治体に損害を被らせた」として、ある不動産鑑定士が訴えられました。この裁判で宇都宮地方裁判所は、被告となった不動産鑑定士に対し、地方自治体に損害賠償を支払うよう命じています(2016年3月17日判決)。また、公益社団法人日本不動産鑑定協会は、その鑑定士に会員権停止6ヵ月の懲戒処分を言い渡しています。
所有している不動産の売却、あるいは購入を考えている不動産の鑑定評価を依頼し、その結果が納得できないときは、ほかの不動産鑑定士に改めて鑑定してもらうことで、より現実的な価値を導き出すことができるかもしれません。しかし、そのためには二重に報酬を支払う必要があり、再鑑定の時間もかかってしまいます。そのような無駄を省くためには、初めの依頼段階で複数の不動産鑑定士と会い、信頼できる人(法人)と契約することが大切です。


2002年以降、度重なる改正が行われた不動産鑑定評価基準

1964年に制定されて以来、ずっと変更されてこなかった不動産鑑定評価基準ですが、不動産取引の実情を取り巻く時代の変化に適応するべく、2002年、2007年、2009年、2014年と、立て続けに改正がなされています。
2002年に行われた1度目の改正は、同年に成立した土壌汚染対策法に対応するための全面改正となります。次いで2007年に行われた2度目の改正では、不動産の証券化が加速していく現状に対応する一部改正です。2009年に行われた3度目の改正は、不動産鑑定評価基準によらない不動産評価を容認するガイドラインに沿った一部改正。そして、2014年に行われた4度目の改正では、国際評価基準(IVS)との整合性を図りつつ、建物の価格形成要因を重視し、既存建物への評価の充実を図るための変更が施されました。


不動産鑑定と不動産業者による価格査定の違い

不動産鑑定士による鑑定とは別に、多くの不動産業者が「不動産の無料価格査定サービス」を行っています。こちらは、価格査定の言葉どおり、「お客様の不動産はこれくらいの価格で売れると思われます」という相場や見積もりが提示されるのが一般的です。
もちろん、不動産業者は、売却する自信がある額を提示しています。法的な裏付けこそありませんが、不動産の経済的評価として一定の意味や価値はあるでしょう。「現時点でこの不動産を高値でほしがる買主を見つける自信がある」という業者は、それだけ高い査定額を提示できるからです。

一方の不動産鑑定評価は、国家資格を持つ不動産鑑定士が国土交通省の不動産鑑定評価基準に基づき、法的な責任を負って行うものですから、ほかの査定とは一線を画す客観的信頼性や評価精度があります。例えば、遺産分割が必要となった場合は、不動産資産価値を客観的・公平に評価するために不動産鑑定評価が行われる場合があります。また、相続税の算定には路線価が用いられるケースが大半ですが、路線価が実質的資産価値より高いと感じられた場合、不動産鑑定評価を行うことで適正な資産価値による相続税申告ができるでしょう。また、不動産取得時に当該不動産を担保とした融資を受ける場合も、不動産鑑定評価が必要となることがあります。

なお、不動産の経済的価値は時間経過とともに変化します。不動産鑑定評価も不動産業者による価格査定も、必要なタイミングを見計らって鑑定を依頼することが大切です。また、その際は両者の特徴を理解した上で使い分けるようにしましょう。


不動産鑑定評価が抱えている課題

現在の日本における不動産鑑定の弱点は、動産と一体になった不動産の評価に対応できていないことが挙げられます。例えば、ホテルや旅館は、部屋に備え付けられた備品や建具など、不動産以外の物品(動産)も合わせて、全体としての価値を実質的にとらえるべきですが、現在の鑑定制度はその要請に追いついていません。また、近年注目を集めている再生可能エネルギーを生み出す太陽光パネルも同様で、土地の価格に加えて、動産としての太陽光パネルの価値も総合しなければ、実質のある鑑定はできないでしょう。
また、不動産鑑定士自身についても、研修制度をより充実させ、複雑且つ高度化する不動産取引に十分対応できる鑑定スキルを身に付け、より専門性を高める必要があります。


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