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不動産用語集
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原価法

「原価法」とは、不動産の鑑定評価方法のひとつです。 不動産は唯一無二の商品で、土地・構造・設備などの条件が完全に一致しているものはありません。比較対象がないことから、一般の商品と比べて正確な値段を出しにくい性質があります。
そこで、合理的に不動産の価格を算出するため、不動産鑑定士は「原価法」「取引事例比較法」「収益還元法」という3つの方法を用いています。

原価法では、対象不動産を新たに建築または造成するときに必要な原価(再調達費用)を求め、これに減価修正を加味するというアプローチで不動産評価を行う点が特徴です。つまり、原価法で不動産価値を導き出す場合は、再調達費用を正確に算出できるかどうかが問われるのであって、それを正確に算定できない事情がある場合は、ほかの鑑定評価方法を選んだほうが良いでしょう。

原価(再調達費用)について

原価(再調達費用)とは、対象の不動産を新築の状態でもう一度購入すると想定したときに、どれほどの支払いが必要になるか、その適正価格の総額を指します。
対象の不動産が建物の場合は、建築業者が開発を請け負って建設し、すぐに使用可能な状態で引き渡すことを想定して、発注者が支払うべきであると考えられる標準的な建設費を算出します。さらに、建設を発注する際、発注者が直接負担するべきと考えられる標準的な付帯費用(設計管理費や測量費など)を加算することで求めます。

建物と敷地の原価をまとめて求める場合、建物の原価に、敷地を所有しているときはその敷地の再調達原価、敷地を借りている場合は借地権の価格を加えて算出します。また、敷地の再調達原価がわからない場合は、取引事例比較法など、ほかの鑑定評価方法によって導き出すことになります。


再調達費用を求める2つの方法

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原価の算出には「直接法」または「間接法」のいずれかを用いますが、場合によっては併用することになります。

1. 直接法
対象不動産を精査して、現在まったく同じ工事をしたらどれくらいの費用がかかるのかを計算する方法です。建物の場合、使用されている建材はもちろん、工事で生じた人件費、施工会社の利益など、発注者が請負業者に払う標準的な費用を求め、これに発注者が負担する付帯費用を加算します。

2. 間接法
近隣及び同一需給圏内にある類似の不動産、または同一需給圏内にある代替競争不動産を元に、対象不動産の原価を求める方法です。

原価法は、建材や工法などの変化によって再調達原価の算出が難しいケースがあります。例えば、以前の建物にはアスベストが用いられていましたが、現在は健康被害問題によって使用されていません。このように現在の相場がわからない場合は、アスベストを断熱材に変更するなど同等の有用性を持つ物に置き換える際にかかる「置換原価」を加味して、再調達にかかる費用を計算します。

原価法で注意したいのは、必ずしもマーケットでの売値とは一致しないということです。
原価法は建築コストに注目した評価方法ですから、素材やデザインにお金をかけている建物は、自然と評価が高くなります。しかし、実際の不動産に買い手が現れるかどうかは別の話です。
不動産の中古市場においては、原価法によって導き出された価格と実際の売値が異なるケースが往々にして存在します。あくまで、不動産の価値を導くひとつの目安として考えましょう。


実勢価格に近づけるための減価修正

再調達費用は過去にさかのぼり、新築状態を仮定して算出します。鑑定対象の不動産は、新築からはある程度の時間が経過している状態がほとんどのため、その価値は目減りしているはずです。その目減り分を差し引いて、現実的な不動産評価を実現するのが減価修正の役割です。
修正すべき減価には、「物理的減価」「機能的減価」「経済的減価」の3種類があります。

・物理的減価
経年劣化とほぼ同じ意味で使われるのが物理的減価です。建物は建築から時間が経過すると、どうしても古びたり、壊れたり、ひび割れ・摩耗などの劣化が発生します。その分、不動産価格も減ったものとして価値を修正するのです。

・機能的減価
機能的減価とは、その後に建設された同じような建物と比べて「陳腐」になっているという相対評価を行うものです。不動産の性能としては問題がなくても、新築時は新鮮だったデザインがありきたりになっていたり、部品が旧式になって再調達しにくくなっていたり、全体の設計や機能性がその時代に合っていなかったりすると、不動産価格は磨り減っているものと考えます。

・経済的減価
経済的減価では、時代が経過するにつれて、地域の居住環境が「陳腐」になっていることを評価が下がる根拠とします。例えば、その建物の存在が付近の住環境と整合しなくなっていたり、近くに似たような建物がたくさん建設されていたり、地域そのものが街としての魅力や人気を失いつつある場合を指します。
ただし、中には知名度の高い老舗の店舗や、築100年を超える古民家など、時間の経過によって評価が増す可能性もあります。単純に古いという理由で一概に減価修正をするべきではなく、不動産の個性を観察しながら慎重に検討したほうがいいでしょう。


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