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GLOSSARY
不動産用語集
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出口戦略

pixta_10285117_M投資でいう「出口戦略」とは、買収した企業・事業の売却や転売により投下資本を最大限に回収する意味で用いられているほか、経済・金融対策で、「締めくくり」を指す用語として用いられています。
元々はベトナム戦争時のアメリカ国防総省内で、敗勢下の米軍をいかに最小限の損害で撤退させるかを指す用語として使われたのが始まりといわれています。その後、経営用語に転用され、市場や事業からの撤退時に「経済的損失を最小限に抑える戦略」を指す言葉として使われるようになりました。

不動産投資における出口戦略は物件の売却

さて、不動産投資においては、出口戦略は「投資物件売却」を指します。不動産投資では、物件に投資する「入り口」と、売却する「出口」が必ず存在します。その理由は、投資物件は「最適な時期に売却しなければ投資収益を最大化」できないからです。さまざまな投資方法がある中で、不動産投資には次のようなメリットとデメリットが存在します。


<メリット>

  • ・賃貸に出している限り、定期的な「月収」を得られる
  • ・売却のタイミングを計ることで、値上がり益(キャピタルゲイン)を期待できる
  • ・購入した不動産を担保に、さらに融資を受けられる(資金のレバレッジが利く)
  • ・ローンを組んで購入した物件が値下がりしても、担保権を持つ金融機関から追加担保を求められない

<デメリット>

  • ・すぐに現金化できない(資産としての流動性が低い)
  • ・分割して売却しづらい
  • ・家賃滞納や空き室、賃料相場の低下、地震や火災など、特有のリスクを伴う
  • ・ローンを組んで購入した不動産が値下がりした場合、返済に窮することがある

優良物件で投資初期は高収益を確保していても、その後は「金利上昇」「空室率増加」「大規模修繕」などで多額の支出が発生するなど、不動産投資にさまざまな運用リスクがつきまといます。もちろん、不動産によってリスクやリターンの差が生じますから、物件選びの段階(入り口)での見極めが大切です。しかし、あらゆるリスクとリターンの要素が、購入時からすべて顕在化しているわけではありません。したがって、どのようなリスクがあとで生じても、リスクを抑制・分散し、収益を最大化させるための出口戦略が極めて重要になります。

良い出口戦略には不動産会社や金融機関との良好な関係が必要

保有する物件を手放す際、売り時や相手を運任せにするのでは再現性がありません。その後の成長につなげるために、そして次の投資を行うためにも、事前にさまざまな準備をしておくことが重要です。


まずは、不動産会社との付き合いを密にすることです。登記情報を仕入れて、会社の資本金などで経営規模や取引件数を推測しながら、複数の会社と交流を深めてみましょう。ある程度の付き合いになっても、なかなか優良物件を紹介してくれない会社は、思い切って見切りを付けることも大切です。
また、オフィスの雰囲気や従業員の服装、言葉遣いなどに不快感を覚えたときはズルズルと付き合わず、自分の勘を信じて、早期に見切りを付けても良いでしょう。このように、複数の不動産会社と信頼関係を築き、購入時だけでなく、売却の際にも信頼できるパートナーを確保しておくことが大切です。


融資を受ける際は、低い金利を提示してくれる金融機関を選ぶようにします。不動産の担保があるわけですから、まずは低金利になる都市銀行・地方銀行の順に融資を打診しましょう。所有物件の担保評価が低く、銀行からの融資が難しいときは、金利はやや高くなりますが信用金庫やノンバンク系の金融機関を検討してください。融資が下り、無事に物件を購入してからは、運用時に起きる不測のリスクを避けられるよう、できるだけ短期的な将来を見据えた「出口」としての売却計画を立てることが肝要です。

不動産投資の目的によって変わる出口戦略

ほかの物と同様、不動産も「安く買って高く売る」ことは基本です。しかし、どれだけ安価でも、建物に魅力がなくて入居者が現れないようでは意味がありません。例えば、築古で条件の悪い建物の場合、「リフォーム(改修)」や「リノベーション(刷新的改造) 」によって価値の向上を図り、「入居率 」や「賃料アップ」の引き上げを検討することになります。つまり、購入した物件をリフォーム・リノベーションする費用を、初期コストに盛り込んでおく必要があるのです。
また、区分所有のマンションは、駅に近い物件が多く、維持管理が容易なことから、投資家の人気を集めています。そのため、安価で購入することは難しい傾向がありますが、売却時は「買い手が確実にいる」ことが想像できます。そこで、「リフォーム費用を抑えて高く売る」という投資方法が考えられるのです。


物件の出口戦略を探る時期は「譲渡税 の税率区分の変わり目」「大規模修繕の時期」「キャッシュフロー の転換点」など、一般的に5年から10年のサイクルで訪れるといわれています。しかし、実際は「資産形成」「相続税対策」「所得税節税」など、投資家の目的や状況の変化が大きく影響するものです。


資産形成の場合は、継続的な家賃収入を得るため、10年以上の超長期所有を前提に収支計画を立て、その間にキャッシュフローがどのように変化するかをシミュレーションしてから入り口を作るのが普通です。しかし、どれほど綿密なシミュレーションをしても、自然災害などによる想定外の修繕費の発生や、キャッシュフローの悪化など、「所有に伴うリスク」は避けられません。そこで、投資運用状況や収支内容を定期的にチェックする必要が出てきます。そして、その結果次第では、物件を予定より早期に売却して利益を確定、次の優良物件に乗り換える出口戦略を取る必要もあるでしょう。


相続税対策の場合は、相続が発生した当初の節税目的を達成したらすぐに売ることで、売却益を稼ぐケースが考えられます。こちらは、5~10年の中長期で出口戦略を探ると良いでしょう。


一方、所得税 の節税を考えた投資は、築古の木造アパートで入り口を作るケースが多くなりますから、5年以内の短期決戦で出口戦略を探る必要があります。法定耐用年数を過ぎた木造アパートは、税法上、4年で建物の「減価償却 」ができることがポイントです。その分、1年あたりの償却費計上が大きくなることから課税所得を圧縮でき、節税効果が期待できます。しかし、5年目に入ると、今度は償却費計上がゼロになるため所得税が跳ね上がり、節税どころか逆に納税負担が増大します。これを避けるために、5年目に出口戦略を発動する必要があるのです。ただし、「譲渡益」には注意が必要です。具体的には、所有期間5年未満の場合は30%(さらに住民税が9%)、5年以上では15%(住民税は5%)の譲渡税が課税されますから、せっかくの節税効果が薄れるケースもあります。


投資物件の売却は「買手発掘」や「市況の変化」など、さまざまな外的要因に左右されるため、投資家が独力で出口戦略を探ることは困難です。できれば入り口の時点から、組織的に対応するプロフェッショナルのサポートを得ることが、不動産投資における出口戦略の常道でしょう。

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